美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω88

 この街はとても静かになってた。崩壊は一応止まり、根も鳴りを潜めてる。でもよく感じると、大地からかすかな揺れを感じる事ができる。地中にこの星を埋め尽くす根が這ってるのがわかるんだ。ぞっとする……この星にいる限り、あの根から逃げきることなんて出来やしないだと改めて思う。

「ってラーゼ様、そっちじゃないですよ」

 先頭でさっさと歩きだすラーゼ様の手を取って止める。なんでこの人はこうも確信めいて全く違う方向に行けるの? いや、流石の自信満々ぶりだけどね。一瞬そっちかな? って思ったほどだよ。

「違うの?」
「違います」
「よくわかるわね。こんなぐちゃぐちゃなのに」

 そういうラーゼ様は感心してくれた。けど、その言葉的に完全に当てずっぽうで動こうとしましたよね? 色々とやっぱりすごいなこの人。

「私は軍の訓練受けてますから。ちゃんと地図を読む技術を会得してます」
「へえー、確かに軍人が迷ったりするとかは森とかでしか聞かないかも?」
「市街地にはわかりやすいですよ」
「初めて来た場所なのに?」
「目印になるものは覚えてますし、道がちゃんとありますからね。後は地図と照らし合わせるだけです」
「なるほど、なら任せた」

 そういって私に先に進む様に促すラーゼ様。私は一礼してその任務に就くよ。周囲を確認しつつ、頭の中の地図と照らし合わせて進む。

「ねえねえ、まさかあの表示された地図全部頭に入ってるの?」
「そうですね」
「本当に? 絶対に正確だって自信ある?」

 さっきからラーゼ様がちょくちょくそんな事を聞いてくる。いや、気持ちはわかるけどね。絶対に正確に覚えてるなんて信じられないってのもわかる。普通は出来る事じゃないだろう。けど私は軍人だ。ユングだって居たらきっと出来ただろう。

 地図とかは正確に覚える訓練とかさせられるのだ。作戦を理解するのにも、軍と移動するのにも、そして指示通りに動くのもいちいち地図を開いて……なんてやってられない。軍人には必須のスキルなんだ。だから私はこういうよ。

「大丈夫です。任せてください」

 こういうのは弱気はいけない。自信満々な方が周囲も不安を吹き飛ばせるのだ。本当にあってるのかな? とか思って恐る恐る移動するよりは、確信めいた歩みがスムーズな移動に繋がる。

 という訳で、何かに遭遇することなく、私達は目的の建物に来た。それは建物全体が鏡面の様になってる四角い台座に球体が乗ってる様な建物だった。瓦礫が落ちてて、その建物の一部がひしゃげてるが、大部分は残ってるし、大丈夫だと信じたい。

「ここです」
「よし、クリエイトのいう事が本当に正しかったのか確かめよう」
「それが目的じゃないですよ!」

 そんな冗談言ってくるラーゼ様に私は突っ込んだ。

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