美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω80

「うん、チンプンカンプンですね」
「知ってた」

 不味い……ラーゼ様の目が冷めた物になってる。いやいや、だってこれ……よくわからない物がいっぱいなんだ。今の人種の技術よりも、エデンの方の技術に寄ってる気がする。私たちにもエデンの技術ってのは結構機密だから開示されてない事が多い。

 アンティカに乗ってるが、自分たちで整備できる所は装甲とかの部分だけだ。フレームの構造は私たちにはわからない。ネジマキ博士はわかってるらしいが、公表されてたりしないものだ。けど流石にチラッと見ることくらいはある。

 だから記憶と照らし合わせると、エデンの方の技術に近いのかなって……けどそれは納得できるものなんだ。そもそもこの星の種はかつて私たちの星で覇権を握った種らしい。そいつらに星が与えられて移ったみたいな? それはもう大昔の事なので、エデンがあった時代らしいからその当時の技術を発展させてきたのなら、エデンの方と似てておかしくない。

 何よりも人種にとっては途方もない時間で、かつての技術なんてのは既になくなってる。私の知識は今の人種の技術しかないのだ。こんなのわかる訳ない。

「ラーゼ様はそれこそエデンの主なのですから、何もわからないですか?」
「私は使う側だもの。作る側じゃないの。作る側になっても、私は指示して作らせる側だし」
「……なるほど、たしかにそうですね」

 ラーゼ様に知識がなくたって問題ないと……なっとく出来る答えだ。偉いラーゼ様がこれを作れとか、あれが欲しいとかいえば、作るしかないのである。そして手に入れられるんだから、ラーゼ様が詳しい事を知ってる訳ない。

 ラーゼ様にもたらされるのは結果なのである。どんな技術で実現したかなんて関係ないのだ。けどそれがトップなんだろう。

「あ……あの……」
「ん?」

 私とラーゼ様は同時にマスクを……いや、車長さんを見た。

「私が……いえ、でも無理ですね」
「あっ、そっか車長さんはエデンの人ですもんね」
「まあエデンに出向してるだけですが……」
「なるほど、なら車長さんに見てもらえば……」
「どうやってよ?」

 最後のラーゼ様の言葉で私は止まった。そりゃそうだ。だって車長さんがこのマスクをかぶってるのだ。これをとったら、彼は生きていられない。いや、ラーゼ様が力を使えば可能だろうが、今はラーゼ様の力に頼れない。そんな事をしたら、世界樹の根がやってくるだろう。つまりはマスクを解析なんて出来ないって事だ。

「ここがちゃんと生きた都市なら、何か情報があるのではないでしょう……か?」

 さっきまで絶望してたのに、車長さんが何やら前向きになってる。そんな要素あったかな? あれか、超絶美少女のラーゼ様が目の前にいるからかな? 男ってほんと単純。まあけど、うずくまれては動くに動けなかったし、よかったと思おう。いつまでもここにいても打開策なんて物は浮かばない、この星の真実にたどり着けるわけもない。
 私達はまだ死ぬわけにはいかないんだ。

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