美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω79

「もしかして私たちが見たあの人たちは元から存在なんてしてなかったんでしょうか?」

 私はそんな推測を口にする。だって突如消えたんだよ? おかしい。あれが幻だと言われた方がしっくりくる。

「けど人が幻なら、こんな街必要なくないかな? 誰もいないのにこんな高度な都市を作ったの?」
「それは……」

 ラーゼ様の指摘に口ごもる。それは正論だからだ。けどそれならここの星にいる筈の種自体はどこにいるって事になるし……あのとき姿を見せたのがそうなんじゃないの? ここ意外にそれらしい所はなかった。

「けどそれならあの人たちはなんだったっていうんですか?」
「そんなの知らないわよ」
「ええー」

 ラーゼ様がてきとうだ。まあここで考えててもわかりようもないのかもだけど……

「私たちは何も知らないのよ。ここが張りぼてかそうじゃないのか……ここにはこの星にいるはずの種が間違いなくいる筈。あの時の言い分的にアレがそうなんだって思うけど……一気に消えたのはよくわからない」

 そういいつつ、ラーゼ様が車長さんを見てる。ガクガク震えてる彼を情けないとか思ってるのだろうか? そう思ってると、立ち上がったラーゼ様が彼に近づいていく。

「ちょっとそれよく見せて」

 そういってラーゼ様が車長さんが被ってるマスクをガバッと近づけてマジマジと見てる。ちょちょちょ、近すぎですよラーゼ様。ラーゼ様がそんなに近づいて興奮しない男なんていませんよ? 事実、さっきまでガクガクしてた車長さんが今やあわあわしてる。どこを抑えてるんですかね……

 まあ目の前いっぱいにラーゼ様が入ってきたら現状よりもその事実の方が大きくなっておかしくないけど……

「これってあいつらが作った物なのよね」
「何か分かったんですか?」
「んー、堅いくらい?」

 その言葉に車長さんがピクッと反応した。いや、別にラーゼ様はそこの事を言ってる訳じゃないと思う。マスクの事言ってるんだよ。

「見たら固いくらいわかりますよ」
「わかってるわよ。何か仕込まれてないかとか思ったけど、よくわからないわね。そもそも私、機械とかに強い訳じゃないし」
「なら私の出番ですね」
「クリエイト?」

 なんだかすごく失礼な目で見られてる。あれかな? ラーゼ様は私の事筋肉女と思ってる節がある。だから私がわかるわけないって思ってるよね? 私はこれでも頭はいい方だ。なにせエリートの集まりの機甲師団に居たんだからね。
 それを知ってる筈なのに、何故かラーゼ様は私を肉体担当と思ってる。確かに! 確かにここにきてから私は肉体労働しかしてないけど!  ここは私の株を上げる為にもこのマスクから何かヒントを見つけなくちゃ。

「失礼します」

 そういって私はラーゼ様の横に膝を落としてマスクを引き寄せる。

「ふう……」

 それは車長さんが吐いた息。おい、なんで私が引き寄せたら安心してるの? なんで局部から手を退けたの? 同じ性別ですけど? まあ私もラーゼ様と同じ『女』なんて思ってないけどね! 悔しくなんかないし!私はグワングワンいしながらマスクを検証する。

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