美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω69

 大きなスペースが確保されてる楕円球場の場所に誘導された。外じゃなくて大丈夫なの? とか思ったが、そこら辺は全然問題ではなかった。微振動を残して止まった列車。そこには既にいた。この列車を囲むように、凄い鎧に身を包んだ奴らが沢山だ。

 鎧が流行ってるのかな? とか私は呑気に思ってたが、ユングとかは違った。

「包囲されてる!? しかもあんな武装した奴らが……やっぱりこれは……罠?」

 なるほど、そういう見方も確かに出来る。包囲されてるし、あんなごつい鎧を皆が来てるなんて、友好的とは思えない。普通なら……もしかしてユングは殺気とかわかんないのかな? 車長さんは……まあ仕方ない。だって車長さんだし。
 ラーゼ様は多分わかってる。だから別段慌てた様子はない。ユングはやっぱり立場上、戦闘経験とかないのかも。いや、この場合は実戦経験かな? それならもっと立場上上のラーゼ様に実戦経験があるのがおかしいって事になるかもだが、切り開いてきた人と、与えられた人の違いだろう。

 ラーゼ様は突如として領主の地位になってそしてエデンの頂点まで昇った人だ。それは全て自身の力。この見た目で信じられない程の激動の人生を歩んでる。かくしてユングは……ユングは……実際そこまで知らないが、エデンに来て聞いた話によると、結構普通な人生だった。

 その差だね。カタヤ様に拾われてからは贅沢に暮らしてただろうし……ぬるま湯といっても過言ではない。

「ラーゼ様、逃げましょう!」
「逃げるってどこに逃げるのよ? それに、彼らは敵対したい訳じゃない様よ」
「何故、そんな事が……」
「まあまあ、私を信じなさい。ねっ」

 それだけでユングは何も言えなくなる。まあ仕方ない。だってラーゼ様が至近距離でウインクなんかしたら、大抵の男共は卒倒だ。まだ意識があるだげ、ユングは偉い。

「外に出るんですね。お供いたします」

 ラーゼ様の考えを先読みして、私は扉に手を掛ける。何回も何回もラーゼ様自身に扉を開けさせる訳にはいかない。それに外に出れるのは私とラーゼ様だけだ。ラーゼ様は一瞬キョトンとしたけど、直ぐに頷いてくれた。ちょっと出来る所を見せちゃったかな? どんどん評価上げてくよ!


 私とラーゼ様が外に出ると、鎧の一人が歩んできた。周りよりも一回りにも大きくて、その鎧に複雑な文様が入った人だ。丸みを帯びた鎧は茶色の深い色をしてて、兜には角がある。

「ガガ……ピーピー……ガガガ……オス……」
「おす?」

 なんだか随分と耳障りな音を出してる。調子悪いのかな? 兜外して素顔を見せないと失礼では? とも思うが、ここは文化や国どころか、星が違うんだ。そこら辺のマナーを指摘しても意味はないだろう。鎧の人は、腕についてる何かを指で操作して、更に首を部分をカチャカチャ回してる。どういう作りなの? 

「これでどうだろうか?」

 驚いた。さっきまで耳障りだったのに、まるで耳をなでる様なイケメンボイスを発したからだ。

「ええ、ちゃんと理解できる様になりました」

 そうラーゼ様がいう。それに満足したのか、胸の所に手を当てるその鎧の人。そして彼はいった。

「我等は貴女を歓迎いたします。別の星の世界樹の巫女様、ようこそお越しくださいました」

 そういって彼が膝をつくと、周りの全員が同じようにラーゼ様に頭を下げる。す……すごい! これがラーゼ様の影響力。私が思い描く英雄像と被るよ! 私はめっちゃ感心した。

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