美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω65

 ラーゼ様はこの星には檻の様な術式が張り巡らされてると言った。それはこの星を守るためのものなのか、それとも……いいや、問題はやはり空から出たり入ったりは出来ないということらしい。実はこの空は偽物らしい。私達の星から見てた様にこの星には厚い雲が覆ってるらしい。

 けど私達にはそれがみえない。昼は青空が悠々と広がってるし、夜は満点の星空だ。けどよく考えたら……いや、少し考えたらこの空の違和感に気づく。それは星がない事だ。私達の星、母なる星がここから見えない。この時点でおかしい。私達の星からは見えて、こちらから見えないなんてそんな事はあり得ないだろう。

「やっぱりここから出るには世界樹を目指すしかないのでしょうか?」
「そうね……」

 扉を閉めて陣を消したラーゼ様。今も列車はその場をぐるぐると回ってるが、いつまでもこうしてる訳にはいかない。私達はラーゼ様の決断を待つ。私達はラーゼ様に意見は出来るけど、決定権を持つのはやっぱりラーゼ様だ。

「出来る事なら、世界樹になんか近づきたくはない……けど、しょうがないか」

 今まではなるべくここの世界樹から離れようとしてた。けど、たすけもなく、自分たちではここから出る事が出来ないのなら……やっぱり世界樹をめざすしかない。ラーゼ様の苦悶の表情もわかる。嫌だよね。誰かの思い通りになるのって。

「最大で飛ばしてどのくらいの速度が出るの?」
「そうですね――」

 そんな相談を車長さんとラーゼ様はしてる。どうやら出来る事なら、今日で世界樹まで辿り着きたいらしい。流石はラーゼ様、切り替えが見事だ。逃げるならどこまでも、辿り着くならなるべく早くが信条らしい。ラーゼ様は見た目は全然私なんかと違うが、通じてる部分もあると感じる。
 ラーゼ様って他の一般的な女性と違って結構サバサバしてたりするしね。私はとてもラーゼ様の好感度が高い。ただの偉く高飛車な人ではないのだ。それは確実だ。確かに偉そうだよ。けどそれは事実だから! 事実、ラーゼ様は偉いのだ。

 偉くもないのに偉そうにしてる奴とか、自尊心で高飛車に振る舞うハリボテじゃない。ラーゼ様には自分の中にちゃんとした信念の様な物がみえる。だから気持ちいいんだと思う。

「最高速で目指すわよ。地上はいかないわ。このまま空で一直線に行く」
「食料はどうしますか? 心許ないですが」
「世界樹に近づければ流石になにかいるでしょう。それに餓死する前にはつくわよ」

 ワイルドすぎる。この愛らしい姿でそんな事を平然と言うんだから、これはついてっちゃうよね。加速する列車が外の景色を置き去りにしてく。この中は魔法的に色々とされてるらしいから大丈夫らしいが、なんかアンティカに匹敵する速さを出してるような? 

「ラーゼ様、本当に大丈夫なのですか? 持ちますか!?」
「私も機体も大丈夫よ。信じなさい」

 ラーゼ様は自身の体を薄く光らせマナを供給し続けてる。それでも止まるなという。物凄い速さで私達はこの星の中心、世界樹と近づいてる。

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