美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω56

 空飛ぶ列車が脱線して何処かへと向けて走り出した。一体何がどうなってるのか……私達は車長に案内されて操縦室に来てた。そこには色々な機器と操縦用のレバーがあったけど、普段はそれは使ってないらしい。これはレーンを走る列車だから、エデンに設置された超高性能のAIが全自動でやってくれてるらしいんだ。

 けど今はどうやらそのAIから制御が切り離されてしまってるらしい。でもエデンのAIなんてゼロとかよりもかなり高性能で凄い奴らしいのに、それから制御を奪える存在なんて物が存在するのだろうか? けど現にこの列車はどこかに向かってる。具体的には上昇してる。

「星?」

 ユングがそう呟いた。確かにこのまま空を通ってたどり着く場所といえばあの世か、星だろう。つまりこれを為してる奴の狙いは私達を死か星へと誘拐する事? 

(って、きっと私やユングやその他はきっと眼中にないでしょうね)

 私はそう思って一人の人物に目を向ける。こんな時でも慌てた様子がない、綺麗で可愛いラーゼ様だ。これを行った奴らの狙いはまさにラーゼ様だろう。彼女に比べたら私達の価値なんてそこらの石みたいなものだ。

「ラーゼ様、敵の狙いはラーゼ様です! 後ろの車両を切り離しますか?」

 この列車は二両編成だ。なら後ろの車両を切り離せば、逃れられるかもしれない。まあその後落ちていくだろうが、このエデンには色々とあるんだ。多分誰かが何とかしてくれるだろう。アンティカだっていっぱいいる。きっと大丈夫だろう。

「そうですね。このままでは制御権を取り戻すことは難しいでしょうし、そうしましょう」

 私の提案をラーゼ様は受け入れてくれた。この車内いる人たちはとりあえず後ろの車両に移ろうとする。けどそこで何かが立ちふさがる。そう何かだ。まるで煙が集まったかのようなその見た目。それは車両を繋ぐ扉の前にあって徐々に人の形に似せていく。

 私は軍人としてラーゼ様達を後ろに下がらせて前にでる。

「何者だ!! 無礼だぞ!!」

 ラーゼ様の地位はまさに最上級。そのラーゼ様の御前に立ちふさがるなんて無礼にもほどがある。実は体中から冷や汗が吹き出そうな程だが、それを隠して私は気丈にふるまう。だってここで唯一戦えそうな私が怯んだらいけない。私はラーゼ様達を守る立場だ。でも武器もないんだよね。

「これはこれは失礼した。どうかお目通りを願いたい……なんてな! くはははは、貴様が必要なのだ世界樹の巫女よ! 我らが星に来てもらうぞ!!」

 一行も殊勝な態度が持たない奴だった。人種に頭を下げるなんてのはあり得ないんだろう。私は奴が何かをしても自分の体を立てに出来る様に仁王立ちして両手を広げる。

「そんな事をしても意味はないぞ」

 その言葉とともに、いきなり外が暗くなった。まさか……まだ空が終わるのは速いし、太陽だって沈んでない筈だ。それなのになんで……すると次の瞬間、景色が更に変わる。ガタガタと車内が揺れて外は遠くが見えない程に砂嵐がおきてた。

「魔法でこの物体事、転移させた。既にここは君たちの星ではなく、我らの星だ。さあ、世界樹を目指せ。出ないと帰れないぞ」

 そういうと煙は霧散していった。私達はそれぞれ視線を交差させる。皆一言目になんといえばいいのか迷ってた。けどそこで場違いな声が響いた。

「あーもう最悪」

 そしてそれを言ったのはなんとラーゼ様だった。あれ? なんかさっきまでと違くない?

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