美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω24

 まだまだ謹慎期間中な私はある日、カタヤ様に呼び出された。しかもいつもの……いつもっていうのもおかしいけど私的にはいつもの第一機甲師団の船『ゼウス』ではなかった。呼ばれたのは城だ。城というか宮殿というかなんだけど、旧首都にある様な聳え立つって印象は今の城にはないんだよね。

 まあけどとても広いし荘厳だけどね。そんな所に呼ばれるってなんだろうか? 寧ろ私を遠ざけてた印象があるんだけど。だってこの前の無断戦闘とか罰しか与えられてないし……勲章ぐらいあったって良かった活躍はした筈だ。

 まあ今日くれるのなら問題ないけどね。私は自身の腕についてるリングを警備の騎士に見せる。それをある機械でピッとすると騎士が通してくれる。そして私が見えなくなるまで敬礼してる。

(ふっ気持ちいい)

 まあ今日は第一機甲師団の正装をしてるから軍関係者なら通り過ぎる度に敬礼してくれるけどね。大体いつもは直ぐにアンティカにのれるようにパイロットスーツに身を包んでるわたしだけど、今日は白の軍服だ。白地に金刺繍がされたこの特別な軍服は第一機甲師団だけの特殊なものだ。マントはそれぞれの機体のカラーを模してる。だから私は赤だ。そんなマントをなびかせながら私い絨毯張りの廊下を歩いてる。

 軍足はカツカツと音が鳴るものだけど、クッション性がある床だから音がなることはない。私は来た事もないのに、勝手知ったる風な顔してアナハイム宮を歩く。我が物顔だ。とりあえず玄関から続く一番大きな通路をまっすぐに歩けば目的地に着くと聞いている。

 多分目的地は謁見の間とかだろう。それは公務に使われる場で、その場ではカタヤ様は第一機甲師団の同僚で仲間のカタヤ様ではなく、この人種の国を束ねる王、そうカタヤ王なんだろう。一応失礼のない様にしないと。昨日何度もシミュレーションしてたから大丈夫な筈。

 いやー第一機甲師団の中ではカタヤ様もベール様もフランクだし、言葉遣いも別に注意されないだもん。いきなり偉そうにふるまうから合わせてねっていわれても……まったくこまった人だよ。

 長い長い道を進む。横を見ると中庭がみえた。なんだか砂利とかが波を描いてたり、変な形の木があったり……なんか見てたらあの波を壊したくなっちゃう。ああいう整然に綺麗になってるのって怖しくなるよね。軍の行進とかどれだけ苦行か……まあ偉くなるとやらなくてよくなっていいよね。

 そして私と同じ感情を抱いてるかは知らないが、庭を見つめてる少年が目に入った。

(こんな所に?)

 どこのボンボンの子供だろうか? いい物着てる。でもどこか憂いを帯びた表情をしてる。ちょっと悩んだが、まだ時間はある。遅れるのは不味いけど、あの子供らしくない子供をからかう時間くらいはあるだろう。私は少し道を外れて子供の後ろに立つ。そしてどーん! と背中をプッシュしてやる。

「んな!?」

 間抜けな声を出して綺麗に砂利で描かれた波に落ちてそれを乱す少年。うむ、よくやってくれた少年。私は満足した。さていくか。

「まて!」

 何故か後ろから声をかけられた。私に何か様だろうか? まさか惚れられたか? でもちょっと子供は趣味じゃない。

「ごめん、あと八年くらいして出直してきて」
「なんの事だ!? そんなに待てるわけないだろ! なんで私を突き飛ばした!」

 煩い子供だ。私はこの子の心の行動を察してあげただけなのに……

「え? だってぐしゃぐしゃにしたかったんでしょ。うんうんわかるよ」
「そんな事思ってない! なんなんだお前は!!」

 なんとも偉そうなガキだな。この服を見て私の偉さが分からないとはやはりまだまだ子供だね。しょうがないから教えてやろう。この英雄様を。

「その小さな頭に刻み込んでおきなさい。私はクリエイト・クーシャネルラ、この人種を救う英雄として第一機甲師団に選ばれし者だ!」

 私は胸を張ってそう答えた。けどなんだろう。少年はなんか頭を押さえてる。頭痛かな? まあ英雄が目の前にいるんだ。そういう事も起こるだろう。大きく息を吐き、なんかいぶかし気な目を向けたかとおもうと、なんかとても胡散臭い笑顔を向けてきた。
 なにこの子供、不気味。

「そうですか、クリエイト・クーシャネルラ様。失礼しました。それでここには何様ですか?」

 ニコニコとした顔で丁寧に言ってくる少年。でもなんかゾクゾクするな。なんだろうか? とりあえず私はここに来たのはカタヤ様に呼ばれたからだと教える。

「ああ、やはりそうですか。第一機甲師団ですからね。なら、案内しましょう」
「別に子供に案内されるほど困ってないわよ」
「そんなそんな、英雄様を付き人も無しに王の御前につれていけませんよ」
「そう、なら任せてあげましょう」

 持ち上げるのが上手い子供だ。でも悪い気はしない! だからその提案に乗ってあげた。私は少年の後ろに付いて廊下を歩いて大きな扉の前についた。なんか私を見るよりも少年をみて扉に陣取ってる騎士が慌てた様に見えるが気のせいだろう。こっそりときっと私が英雄だと耳打ちでもしたに違いない。

 なかなかに気が利く奴だ。本気で八年くらいたったら考えて野郎かな? そんな事を考えてる間に大きな扉が開いてく。

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