美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω21

 めっちゃ怒られて私はしばらくゼロに近づく事が出来なくなった。反省文は山の様だし、軍規を一から学べと大量の宿題を出された。復帰日に試験って……そんな学生みたいな。大体軍規なんて必要な箇所だけ覚えてればいいんだよ。
 普段使う事なんてないんだから。それを一から十までって……そんなの意味がない。今はどんどんと敵が侵攻を開始しだしてる時なんだから、私も一刻も早く戦力になれるように常にゼロと一緒に居るべき……そう、寧ろもうゼロのコクピットで寝泊まりしてもいい筈なのに……パイロットを愛機から遠ざけるなんて……無駄の極みだよ。

「ふっ! やあ!!」

 私は勉強のストレスを発散する為に訓練場に来てる。型なんて私にはない。一応習ったが、私は戦闘センスがずば抜けてあるらしくて我流でいつも同期は圧倒してた。型なんて物が必要なのは所詮はセンスがない奴なのだ。まあ型の効率的な所は否定はしないけど。
 ただ、私には合わないってだけだ。一応この国にある流派を一通りは学んだしね。そこまでしてるのはきっと私くらいだ。その上で自己流。これはクーシャネルラ流なのである。

「ふう……」

 一通り体を動かしてタオルで汗を拭く。広い訓練場には今は私だけだ。敵側の動きが激しくなってるからね。訓練なんかやってる暇はないんだろう。そりゃあ予備部隊とかも勿論いるけど、暇してるのは私くらいのようだ。まあ正式に軍に入るとこういう所からは足が遠のくよね。

 それこそ定期的な訓練が組み込まれてない日にまで自主的にここを使う奴なんて限られてるだろう。

(結構充実してるんだけどね)

 数年前まではそれはそれは古めかしい場所だった。それこそ走る場所と体を鍛える場所と模擬戦が出来るくらい? だったね。けど今は違う。ここにも技術が取り入れられてる。私達が相手にする敵は基本他種族だ。だから今まで戦ってきた他種族のホログラムを作り出し、そいつらと戦ったりできる様になったりしてる。正直、勝てる奴もいれば絶対にどうしようもない奴もいる。

 だけどそのどうしようも無さを実践以外で体験できるのは貴重だ。だってそんな奴を前にして生き残れるのは幸運以外の何物でもないんだからね。そしてこれからの戦いはそんなどうしようも無さの理不尽だらけの戦いだろう。

 知ってるのと知らないの……覚悟が出来てるのと出来てないのとではその時の動きが変わるだろう。とりあえずアップは終わったし、私は今日の対戦相手を選ぶ事にする。壁際にある装置に手を触れてどれにしようかなって……なるべく強敵がいい。

 けど勉強のストレスを発散したいから適度に勝てる奴がいいかもしれない。鉄血種とかはまず無理だからパスするとして――

「うん? これって」

 ――私はある項目で手を止める。こんなのちょっと前まではなかった筈だ。一番利用してる私が言うんだから間違いない。けど今その名前がある。私はそれを選ぶ事にする。すると訓練場の一角にフィールドが六角形のフィールドが形成され、その頂点から青白い線が走る。それは次第に私が選んだ対戦相手を形作る。

「小清水亜子」

 そう、私の指名した対戦相手は今はもうこの世界に居ない前のゼロのパイロットその人だ。

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く