美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√91

「どう……ですか?」

 少し頬を赤らめて魔王ミリアが耳を強調するように髪をかき上げる。エロいうなじが見えてる。人種じゃないけど、人型だからエロい所はちゃんとエロい。耳も別に普通の耳だ。きっとハムハムしたら美味しいんだろうなってちょっと思う。こちら側にいる男共も我慢してるが、見てるのはわかってる。まあまあそれは男としてしょうがないでしょう。
 綺麗で可愛い女が無防備にうなじや隠れてる耳を晒すとか見ちゃうよね。

「ああ、とてもよく似合ってる」
「ふふ」

 幸せそうな顔をするミリア。本当なら……こんな表情をずっとさせて過ごせてたのかもしれない。

(ってこんな世界じゃ無理か)

 私がここに現れなかったとしても、戦場に出てたカタヤ達はいずれ……そういずれ死んでただろう。それはどっちが早いかの違いでしかなったと思う。いくらアンティカのおかげで人種が多少は強化されてたとしても、結局三機しかないじゃ、その内破綻するのは目に見えてたしね。

 それにこの世界には強力な種が沢山いるし……三機のアンティカ程度じゃね。だからこの二人を見て私が罪悪感感じる必要性なんて全くないよね。寧ろ、あの時終わってた筈の家族を再び引き合わせたのは私ではないだろうか? こうやってミリアが魔王となってるとしても再びカタヤと再会できたのは私のおかげだし。

「いいからちょっとマナを流してみなさい」

 私が声をかけるとあからさまにムスッとするミリア。どうやら兄妹の中に入ってこられるのがとても嫌なようだ。けどちょっとカタヤが促せば可愛くうなずいてやりだす。これはカタヤの方に指示を出してあやつった方がいいかも。
 でも直接私が声をかけてそれをカタヤが実行すると、このブラコン絶対に嫉妬するよね。確実だ。ここはピアスの機能を使って直接声を届けるか。カタヤもピアスしてるしちょうどいいでしょ。

「うっ」

 私は椅子の肘置き部分を強く握りしめる。そしてミリアをみた。軽くピアスに触れて目を閉じてるミリア。見た目にはそれだけだ。けど……わたしにはその魔力の流れがクリスタルウッドを通じて感じ取れる。なんせ私がクリスタルウッドの主だし。

 ものすごい大量のマナの流れがいきなり起きた事で乱れが起きてるんだ。まるで大きな川にいきなり別の川が合流して水量がマシマシになって水路からあふれ出てるかの様な感じ。それにそれだけじゃない。ミリアは純なマナを沢山吸ってる。
 その流れが綺麗なら、大量のマナを渡して、そして貰う……それに問題はない。減った分を補うんだもん。問題なんてあるわけない。けど……ちがう。問題出てる。それは何故か……まずミリアの……魔王のマナは純じゃない。まあ普通はそうだ。私が直接純なマナを使えるのが異常なだけ。多分神だからと思われる。そんな事を羽持ち達が言ってた。

 普通はマナは染まる物だ。だから魔王ミリアからもたらされるマナも染まってる。そしてそんなマナは流れと共に再び純に戻る。けど、大量でしかもおかしくなった流れのせいでその染まったマナが大量にクリスタルウッドに残されて、純なマナがどんどん魔王ミリアに吸われるということになってる。
 てかこいつ、キララよりよっぽど厄介じゃん。当たり前だけど、キララは自身のマナは大きくないし、人種だからそこまで大きなマナをため込むことも出来ない。だからキララが扱うマナは確かに強大だが、それはあくまでも一瞬だ。短い時間でしかない。けど、こいつは恒久的にこんな事しそうな感じ。

「凄い……これが世界樹のマナ」

 なんか恍惚な表情してるが、このままじゃクリスタルウッドが……いやひいてはこの世界がヤバイ。魔王が悪的な感じってこのせいじゃない? とりあえず私は抵抗する事にするよ。具体的には奴への供給をこちらから断つ。
 クリスタルウッドは私の物。好き勝手には出来ないよ。マナの供給が断たれたのがわかったのか、魔王ミリアが私を見て頬を膨らませる。けど私は確信したよ。やっぱり魔王主導にクリスタルウッドを渡す訳には絶対にいけない。
 こいつには手綱が必要だってね。

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