美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√52

 蛇は雲の中に突っ込んだ。そして後ろにいる彼女が片手の指を輪っかの様にしてそこに口から空気を彼女が吹き込むとシャボン玉のように周囲に沢山の魔法陣が飛び散っていく。シャボン玉と違うのははじけて消えないことだろう。
 飛行ユニットが進んだ後方に沢山の魔法陣が残ってる。どこまで進めばいいのかわからないが、蛇はとりあえず雲を抜けるまでは進むことにする。その判断は正しかったのか、雲を抜けた瞬間、彼女は言った。

「集めますね」

 今度は吹いてた空気を吸い込むようにする彼女。すると指で形作ってる小さな穴に雲がどんどん吸い込まれていく。そしてあっという間に雲はなくなってしまった。

「準備は出来ましたか?」
「うーん、ちょっと足りないかもです。もう少し集めていいですか?」
「もちろん、準備は大切です」

 次の雲へと蛇は突っ込んだ。この間もあのでか物は攻撃をしてるが、離れると攻撃の密度も下がる。被弾の確率はぐっと減っていた。それにあれは戦場の上空に待機してる。焦る必要はない。確実に倒す為にもちゃんと準備した方がいいと蛇は考えていた。

(とりあえずこちらでも出来ることはやっておきましょう)

 そういって蛇は通信を開く。その間にも彼女は魔方陣を飛ばして、それを吸っていくを繰り返す。直接的に水を吸ってる訳じゃなく、雲の中の水分を集めてるわけだから多少効率が悪いのは仕方ない。雲が本当に水の塊なら、空に浮いてるなんて事は出来ないのだ。


「もう大丈夫です!」
「わかりました」

 そんな彼女の言葉で再び蛇は高度を上げる。そして最初にぶつかった時と同じ高度まできた。これ以上は飛行ユニットでは上がれない高度だ。そしてあのデカい化け物はもっと上。流石にあれから三十分程度経ったせいか、攻撃は止んでた。

 だが蛇が落とした触手も完全に元に戻ってるみたいだ。下の戦闘も気になるが……これをどうにかすれば、多分下の戦闘にも影響がある筈だ。

「これ以上上には行けません。どうするのですか?」
「埋めます!」
「はい?」

 何を彼女が言ったのか理解できない蛇。でも彼女は説明するよりも早く行動を起こした。三股の槍を掴み、それが青く光る。そしてそれを放り投げた。けどその槍は怪物まで届きはしない。蛇たちととあのデカい奴のちょうど中間くらいで止まる。

「水の精達よ、我らが空間をこの地に作り給え」

 そういって祈りをささげると、槍から大量の水があふれてくる。きっとあれが雲を吸い取って集めた水なんだろう。ドバドバと凄い勢いで出てくる水は自分たちの高度まで落ちると何か阻む物があるかの様に溜まっていく。そして空中にデカいプールが出来上がる。

「これで届きます!!」
「飛行ユニットでは流石に水の中に入れませんよ?」
「水があれば飛ぶ必要なんてありません!」

 そういって彼女は水の中に飛び込む。水を得てとても生き生きとしてる彼女はまさに水の種族なんだろう。まあテンション上がって変な事言ってるが……

「私は君程早く泳げません」
「私がアンサンブルバルン様を運びます! これなら奴に届きます!」

 確かにそれはそうだが……なんかちょっと不安な蛇。でも選択肢はない。蛇は飛行ユニットを待機モードにして水の中へとはいる。水の圧力が体に伸し掛かる。ただうっとおしいだけだが、ここで自由自在に動けるのは彼女だけだ。

 自分で思う通りに動けないというのはなんとも気持ち悪いと蛇は思う。伸ばされた手……それを蛇がとると、一気に速度が変わった。確実に飛ぶよりも早い速度が出てる。そしてプールから飛び出ると、届かなかった化け物が眼下に見えた。

「この距離ならいけますね!」

 そういって蛇は笑った。

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