美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√51

 不気味な化け物から無差別に空に放たれた光。それが蛇たちへと襲い掛かる。完全な無差別攻撃だから当たりそうな奴だけを避ければいいんだが、その数が多い。しかも一回ではなく、何回も撃ってくる。そして触手は動いてるから、いくつも撃つ内に穴が埋まってく。

「くっ――」
「アンサンブルバルン様! このままでは……」

 何とかいくつか避けてはきたが、それも限界に近づいてる。あの化け物が放つ光はらくらくと二人を飲み込む程のデカさがある。一撃でも当たれば、耐えられるかもしれないが飛行ユニットは無理だろう。そうなるともうここにアクセスする手段がない。
 飛空艇を手配するにも時間が掛かる。なによりもあんなのがファイラルの都市の上に来たならば……それを考えるとなんとしてもここで倒さないといけない存在だと蛇は確信した。

「私、行きます!!」
「待ちなさい! まだ確信がある訳では――」

 彼女が向かってくる光に立ちはだかるように上に跳ぶ。それを蛇は止めようとしたが、彼女は速かった。蛇の手をすり抜けて彼女は大きく体を広げる様に手を伸ばした。

「お願いしますラーゼ様!!」

 次の瞬間、二人の視界を光が覆う。けど痛みはなかった。

「やりました! 行けますアンサンブルバルン様!!」
「その様ですね。ですが、今のような行動は関心しません」
「すみません……」

 再び飛行ユニットへと降り立った彼女は蛇のそんな言葉にしゅんとうなだれる。大金星だが、蛇にとっては予想外な行動は心臓に悪いようだ。

「ですが、これで証明は出来ました。これから上手く使っていきますよ」
「……はい!!」

 花が咲くかの様に彼女は元気な返事をした。蛇の役に立てた事がうれしかったようだ。今も攻撃は続いてるが、蛇にはやりようが見えてるようだ。交わしつつ、危ない奴だけを彼女を守る世界の盾に防がせる。そしてそんな合間に蛇はデカい化け物の触手の数を減らしていった。触手の数が減れば、相対的に砲台じたいが減ることになる。

 だが、どうやらあの触手は予想以上に多いらしい。そして再生もする。これじゃあ、裸にする前に最初に切った触手が復活してしまう。ならば胴体を切り離してみようとおもったが、どうやら触手以外の部分は固いようだ。鞭が通らない。

「想像以上に厄介な」

 現状、鞭しかあの化け物には届かない。それも目いっぱい伸ばしてギリギリだ。他の攻撃手段がない現状……つんでる。

「何か、武器はありますか?」
「私のはこれです」

 そういって彼女は背中の槍をみる。三股の槍は彼女の種のメイン武器だ。

「それは投げたら戻って来たり出来ますか?」
「……み、水の中でなら」

 ならここでは一度しか使えない事になる。それにこの三股の槍に渾身の力を彼女が込めたとしても蛇の方が強い。蛇の鞭で傷つけられないあの化け物を倒すことは不可能だ。

「お言葉ですが、私たちは水の中なら最強です」

 蛇の頭の中を覗いてたのかの様な言葉。実際は違うだろうが、彼女の言葉真剣だ。

「私たちがラーゼ様の軍門に下ったのも、あの方が、我等から桁違いの力で水をなくしたからです。それほどに、我等は水と親和性が高い」
「ですがここに水など無いですよ?」
「雲があります。学者方が言っておりました。雲は水だと」
「なるほど……ですがその雲、下の方ですけどね」

 そうなのだ、既に雲よりも戦闘高度が高い。

「ならば引き上げましょう! 方法はあります! 雲に進路を取ってください!」
「……いいでしょう」

 既に蛇自身も手詰まりだったのだ。何か方法があるのなら、それをやってみてもいい。そう思って蛇は飛行ユニットを下降させる。そして雲に突っ込んだ。

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