美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√40

 ガチャガチャガチャガチャ

 沢山の足音が足早に通路を走ってる。兜に隠れて顔は見えないが、空気で焦ってるのがわかる。ファイラルの正規の騎士の鎧は黄土色的な騎士甲冑だ。だがよく磨かれたそれは黄金に見えなくもない感じだ。走る騎士たちの背丈は様々だ。人種だけなら、それほど変わりはないだろうが、ファイラルは多種族が入り乱れてる領だ。だからぱっと見ただけでも縦に長かったり短かったり、横に広がってたりする者がいる。

 彼らは通路を進みその先の重要な場所で一度止まる。

「この先がクリスタルウッドの間だ。中の様子は魔法で確認できるが、まともな状態ではない。皆、兜の機能を発動させろ」

 そういう一人の騎士の声に皆がうなづいて兜の側面部分に触れる。そしてそこを指で撫でる。勿論ただ撫でるだけじゃなく、決まった動きをして、魔力を流してる。それで内蔵された機能が発動される様になってる。

兜は基本、視界を極端に狭める物だ。頭を守る事と引き換えにそうなるのは仕方がないのかもしれないが、一長一短であることは間違いない。生物にとって頭は弱点。だから兜をしてると安心感もあるが、視界が狭いと不安もあるのだ。最初は慣れない物だし。

 だが、この兜はそんな不安を払拭してる。寧ろ魔法で元の視界以上を確保できる。そして毒とかも防ぐ事が出来る様になってる。

 クリスタルウッドの間には沢山の兵と民衆がいる筈だが、突然報告が途切れた。いくら呼び掛けても中にいる兵士たちからは応答もない。異常事態であることはまちがいない。だからこその騎士の出撃だ。僅かに顔をのぞかせて騎士の一人は中の様子をうかがう。そこにはクリスタルウッドを中心に皆が膝を地面につけてクリスタルウッドを見てる様がみえた。

(何をやってる? ――ぶっ!!)

 思わず鼻を押さえようとしたが兜があるからそんな事はできなかった。だから必死に鼻に力を籠める。そうしないと血が滴りおちそうだったからだ。膝を地面についてる面々の中で一人だけ立ってる女。その恰好が問題だ。彼女は全裸だった。何も身にまとってない。褐色の肌に二つの双丘がせり立ってるし、股さえも丸見えだ。

(アレが魔族……か)

 褐色の全裸の女の頭にはねじれた角があり、腰には小さな羽がついてる。明らかに人ではない。この原因は間違いなく彼女であろう。だが一体何が目的のなのか。今の所何をしてるのかわからない。ただ単に皆が虚ろな目でクリスタルウッドを見てるくらいにしか思えない。何か目的があるのなら、それを暴きたい所だが、あそこはこのファイラルでも最も需要な場所だ。

 いつまでも敵に闊歩されてる訳にはいかない。いくつかの騎士に銃を構えさせる。狙いはもちろんあの女だ。呼吸とタイミングを合わせて、攻撃は開始された。

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