美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
√29
「行け! ラーゼ様に歯向かう愚か者に鉄槌を下すのです!!」
後方の陣で蛇ことアンサンブルバルンは全軍の指揮を執っている。国軍がここまで愚かな事をしてくるとは彼にとっては予想外だったが、どうやら魔王がけしかけてきてるらしいとなれば話は別だ。ハゲの情報によれば魔物たちが多数国軍側についてるらしい。
「こちらにはまだ魔物の影はない……ですがでてこないと考えるのは愚かしい。出ると思って行動するべきでしょう」
「魔物ですか……まさか王が魔王と手を組むなんて……」
「手を組んだのかは分かりかねますね。いい様に使われている……そういう風におもえます」
「ですが、確か王族の身に着ける物には色々な魔法の守りがあると聞いた事がありますが?」
ふむ……と蛇はすこし考える。確かにそれは蛇もしってる。実際この隣にいる彼よりも知ってる。彼はここ『グランロバ』の領主――の息子だ。次期当主と言っていい立場。こうやって領主が戦場に赴かせてるのもこれが経験になればということだろう。
グランロバは隣り合ってるだけに懇意にしてた領だからか、すぐさまこちらに組み入った。というか、グランロバにはそれ以外の選択肢はないと言っていい。もうほぼファイラルの一部みたいなものだからだ。グランロバはファイラルの援助なしにはたちいかない。だからこちらに組するほかない。
まあだからってそれをいやいややってるかと言えばそうでもない。ありがたがってくれてる。いい関係だと蛇はおもってる。
「確かに王族の装備は魔法の守りがあります。ですがそれも人種が掛けれる物。種族的に高位の者達ならそれを突破する事は容易いでしょう。ただ単に人種が今まで生きて来れたのは関心を集めなかったからです。ですが今は違う。
今まで様な守りで大丈夫だと過信していた王たちはそこを突かれたのでしょう」
「なるほど……ですが我々はもう他者に命の選択権を握られた側ではないそうでしょう?」
「そうですね。『我々は』そうです」
そういう蛇は嬉しそうだ。我々というのはファイラルに属する者達の事だ。ラーゼという存在が世界に対する切り札になりえる。そして世界樹もある。こちら側だけに限って言えば奪われる側ではない。それを自分の力と思ってしまった王のなんと愚かしい事か。
(いえ、魔族に介入されたのなら仕方ないですね)
そう思ってると、控えてる一人が卓上に浮かんでる戦場の俯瞰の映像を見てこういう。
「アンサンブルバルン様、先陣の戦闘がひと段落してようです」
「そうですね」
さて、国軍はどう出てくるか……物量だけで押し通そうとしてくれれは楽なんだが……と蛇は考える。
(でもそれならここで止まる事はしないでしょう)
向こうは圧倒的に数の利がある。流石にあの数をこちらの少数部隊で完璧に封じるのは不可能だ。でもそれでも数に頼ってくれれば……というのは勿論こちらには策があるからだ。そして向こうは数を使うのが一番簡単。指揮系統もまともに出来上がってないような烏合の衆なら、やりようはいくらでもある。
まえにいたのはおそらく国軍に有力な領の兵士だろう。そいつらをいったん下げて、今度はどうでもいいような領の兵士たちを前に出す……か?
「ビンゴですね」
動きを見てると後ろの部隊が前に上がってきてる。自分たちの力は温存しつつ、手柄をあせる奴らを特攻させる。有効な手だ。だが……
「愚かでもありますね」
蛇はそう言ってその細長い舌をチロチロと動かした。
後方の陣で蛇ことアンサンブルバルンは全軍の指揮を執っている。国軍がここまで愚かな事をしてくるとは彼にとっては予想外だったが、どうやら魔王がけしかけてきてるらしいとなれば話は別だ。ハゲの情報によれば魔物たちが多数国軍側についてるらしい。
「こちらにはまだ魔物の影はない……ですがでてこないと考えるのは愚かしい。出ると思って行動するべきでしょう」
「魔物ですか……まさか王が魔王と手を組むなんて……」
「手を組んだのかは分かりかねますね。いい様に使われている……そういう風におもえます」
「ですが、確か王族の身に着ける物には色々な魔法の守りがあると聞いた事がありますが?」
ふむ……と蛇はすこし考える。確かにそれは蛇もしってる。実際この隣にいる彼よりも知ってる。彼はここ『グランロバ』の領主――の息子だ。次期当主と言っていい立場。こうやって領主が戦場に赴かせてるのもこれが経験になればということだろう。
グランロバは隣り合ってるだけに懇意にしてた領だからか、すぐさまこちらに組み入った。というか、グランロバにはそれ以外の選択肢はないと言っていい。もうほぼファイラルの一部みたいなものだからだ。グランロバはファイラルの援助なしにはたちいかない。だからこちらに組するほかない。
まあだからってそれをいやいややってるかと言えばそうでもない。ありがたがってくれてる。いい関係だと蛇はおもってる。
「確かに王族の装備は魔法の守りがあります。ですがそれも人種が掛けれる物。種族的に高位の者達ならそれを突破する事は容易いでしょう。ただ単に人種が今まで生きて来れたのは関心を集めなかったからです。ですが今は違う。
今まで様な守りで大丈夫だと過信していた王たちはそこを突かれたのでしょう」
「なるほど……ですが我々はもう他者に命の選択権を握られた側ではないそうでしょう?」
「そうですね。『我々は』そうです」
そういう蛇は嬉しそうだ。我々というのはファイラルに属する者達の事だ。ラーゼという存在が世界に対する切り札になりえる。そして世界樹もある。こちら側だけに限って言えば奪われる側ではない。それを自分の力と思ってしまった王のなんと愚かしい事か。
(いえ、魔族に介入されたのなら仕方ないですね)
そう思ってると、控えてる一人が卓上に浮かんでる戦場の俯瞰の映像を見てこういう。
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