美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√15

 光が差し込んでる。外はまだパレードの騒ぎの喧騒が残ってるのか、ガヤガヤとうるさい音が聞こえていた。涼やかな風が薄く空いた窓から入ってきてるようだった。髪が揺れる感覚がある。更に後頭部には何か柔らかい感触。それにいい匂いが鼻孔をくすぐってる。

 瞼の裏からでもわかる光に刺激されて自分は重い瞼を開けた。するとすぐそこにはセイの顔があった。逆さまに見えてるセイの瞳は閉じられて口は半開きになってた。そこから涎が……ちかくに布なんてない。だから落ちてくる前にその涎を手で受け止めて彼女の口元をぬぐった。
 夫婦なんだ。妻の涎を汚いなんて思わない。唇に触れたからか、セイは閉じてた目を開けた。

「よかった。起きたんだね」

 そういって笑ってくれるセイ。その笑顔を見れて自分は心の底からホッとした。なぜだろう……ついさっきまでこの笑顔を永遠に失ってしまったかの様に感じてた。

「なんで……寝てるんだっけ? ここは?」
「もう、私たちの家を忘れたの?」

 そういってクスクスと笑うセイ。そうか……確かにあたりを見ると自分たちの家だとわかる。まあ家というか、部屋だが……そうかもどってきたんだ。そこで頭に違和感が起きる。

「どうやって戻ってきたんだっけ? てかいつ?」

 確か今日はアナハイムの街を見て回ったりしてた筈。そこで……そうパレードがあって……なんのパレード何だっけ? ついさっきの事なのに記憶が抜け落ちたかの様におもいだせない。

「はしゃぎ過ぎたんだよ。全く、それは私の役目なのに大変だったんだから」
「ごめん……けど、あれ? 探してたのは自分の様な?」
「何言ってるの? ずっと二人一緒だったじゃない」

 そういってセイは僕の手を取って握ってくる。手の甲から覆うように彼女の温もりが伝わってくる。安心する。それと共に、疑念はどこかに溶けていくかのようだった。

「そう……だな。夫婦だもんな」
「うん、ずっと一緒。ずっとね」

 自分たちは見つめ合う。でもこの態勢じゃ自分からは攻められない。そう思ってると、セイが顔を近づけてきた。どんどんと近づく顔が、セイ以外を瞳に入れる事を許さない。そして触れ合う唇と唇。何かが自分の中に入ってくる感覚。
 きっとこれが幸福なんだと思った。

 膝枕から脱すると、途端に恥ずかしくなって自分はセイの顔が見れなかった。見れなかった……が、手は繋いだままだ。放す事なんてできない。本当なら……許されなるのなら、もっと踏み込みたいと思ってた。日は既に傾いてて、黄昏に染まる部屋はいい塩梅だと思う。
 ベッドだってあるし……押し倒しても……セイは受け入れてくれるんじゃないか……自分がそう思って行動に移そうとしたその時――

――グウウウウウウ――

 と、お腹の虫が盛大になった。

「何か、食べにいこっか?」

 それで完全にムードはどこかへ消えた。自分たちはこの建物に併設されてる食堂へと向かった。そしてそこでニュースを見た。
 そこでこんな事を行ってた。王妃様電撃帰還、ファイラル領が反国領とされ国軍が進行を開始……とか。学の乏しい自分はイマイチよくわからなかった。

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