美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√13

 結局の所、王妃様を拝むことは出来なかった。けど、王妃様の乗ってる飛空艇を迎えるための演出はとてもすごかった。田舎の村では見る事なんかできないような光景がたくさん見れた。空を彩る光や煙の演出。あんなのは村では一生拝むことは出来なかっただろう。

 思わず見入ってしまってた。だからだろうか、いつの間にかセイとははぐれてしまってた。この人込みだ。ちゃんと手をつないでた筈なのに、気づいたらセイはいなかった。自分がパレードに夢中になってしまってたから全然気づかなかった。

「セイ! セーーーーイ!」

 自分は声を出しながらこの人込みの波をかき分ける。けど全然反応はない。この人の多さだ。いくら叫んだ所で、その声はがやがやとした音に消されて遠くにまでは届かないだろう。結局王妃様も見れずにセイともはぐれるなんて……ついてない。そうおもった。

 だがそれでも昨日までと比べたらこんなのは何ともない。だって別に命にかかわる事でもないんだからな。とりあえずはぐれた時の常套手段を考えると。

「やっぱりこういう時は一度戻るのが一番だよな」

 村では誰かとはぐれるなんて事はなかった。だって少し離れたってよく見えたからだ。森とかに入れば別だったが、そういう時は、一度最初の場所に戻るのは鉄則だ。無暗に歩きまわると、こっちも迷子になる。そうなったらそいつを探す場合でもなくなる。

 それに案外、始めの場所に戻ってくるってのはある。今の自分たちの場合は、多分難民達にあてがわれたあの建物だろう。あそこが自分たちの今の家だし。だからそこに戻ろうしたら、今度は何やらその方向に人波が向かってるような? 

「あの……まだなにかあるんですか?」

 人のよさそうなおばさんにそんな風に聞いてみた。するとおばさん親切に教えてくれた。

「なんかねえ、王妃様がパレードしてくれるらしいわよ。だから皆見ようとしるのよ」

 との事だ。どうやら見れなかったと思ってた王妃様は見れるらしい。けど今はそれどころじゃない。王妃様よりもセイを探す方が重要だ。だが、大きな道は人でごった返してる。多分この大通りを使って王妃様はパレードするんだろう。なんて迷惑な……これでは家に帰れない。

(いや、多分他にもルートはあるんだろうけど……)

 今日この街を知ろうとしてる自分はもちろん他の道なんてしらない。無暗に裏路地を使おうものなら、きっと間違いなく迷うだろう。けどこのままじゃ絶対にセイとは合流できない。

「待てよ、そもそもこれじゃあ、セイだって家には帰れないじゃ……」

 そこまで思い至って、自分は途方に暮れた。一体どうすればいいんだ!? 結局、やみくもに声を上げて探すしかなく、時間だけが過ぎていく。そしてパレードは開催された。それから少しして、この街に異変が起きた。

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