美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√6

「あれが……アナハイム!」

 窓から見える景色に自分は感嘆の声を漏らした。隣では彼女『セイ』が「すごーい!」を連呼してる。今自分たちは病室から出て、甲板に出てた。勿論勝手に出てきたわけではない。もうすぐアナハイムにつくということで保護した人たちは甲板に出てもいいと放送が聞こえたからだ。

 一目アナハイムを見たい人たちは既に甲板に出てた。この船は自分が想像してたようなただの船の姿ではない。本当に鳥の様な、語りで想像したドラゴンの様な……そんな感じだ。昔聞いた飛空艇というのはまさに浮かぶ船と聞いていたが、イメージが壊された。
 どうやって浮いてるのか、全然わからない。だって翼はあるが、鳥の様にはためくわけではも無いからだ。きっととてつもない魔法が使われてるんだろう。

 しかしそんなとんでもない技術を使った船を「こっちの方が速いから」という理由だけで駆り出すとは……ファイラル領というのは本当にすごい領だと思った。この話は外出を許可してくれた船の船医の人に聞いた。

「遠くに見える街も凄いけど、ここも凄いね!」

 そういうセイの言葉に自分は頷く。確かにあの遠くに見える街が自分たちのいた村とは比べ物にならないのは遠めでもわかる。でも遠くだから眺めるくらいしかできない。まあけどどうやらすぐにつくらしいんだが。けど不思議な事に甲板に出てるというのにここに風なんてない。とても快適だ。

 そして周りには木々や花々がある。木にはオレンジ色の実もついてたりするし、ただの甲板じゃない。いや、自分の様な田舎者は甲板なんて物はしらないんだが、これがきっと普通じゃないってのは何となくわかる。だってここで普通にお茶とか楽しめそう。

 この甲板だけで、村の一番豪奢だと思ってた村長の家の一室よりも凄い。いや、はっきり言えば村長の家など足元にも及ばない。だってこんな空の上で優雅にお茶が出来てしまうんだ。もしもここで金をとったらどれだけ払わないといけないのか……きっと自分たちの様な農民の生涯年収では足りないんではないだろうか? 

「んんー」
「何やってるんだ?」

 セイは必死に手を伸ばして木についてるオレンジの実をとろうとしてる。けど彼女は僕を支えてるから微妙に届かない。だから手を伸ばしてプルプルしてた。これは……ささえて貰ってなんだが、もっと体重をかけた方がいいかもしれない。

「やめろ。それはダメだから」
「でもお腹が……ずっと『カイ』の傍にいたから……減った」

 それを言われると顔が赤くなって強くでれない。けど確か襲われる前に食ってなかったっけ? いやあれくらいではこいつは足りないか。けどやっぱり食べさせる訳にはいかない。実ってるからって勝手に取るのは泥棒だ。それはいけないことだ。
 それも助けてもらった人たちにそんな事はできない。

「我慢してくれ。ちゃんと……腹一杯食べさせてやれるように頑張る……から」

 恥ずかしくなりながらも自分はそうセナに言った。けど彼女はその意味を理解してないのか「今欲しいー!」
と駄々をこねる。こっちはかなりの覚悟で言ったんだけどな……そう思ってると近くの人が例の非常食を分けてくれた。どうやらあの化け物に立ち向かったのを見てた人の様で熱く語られた。その人が切っ掛けだったのか、甲板にいた人たちがこっちに集まってきた。

 思いがけない称賛に自分はなんて返していいかわからなくて恐縮してばかりだった。でも悪い気はしない。それにセナの手には領てでも持てない程に非常食があふれたしね。
 そうこうしてる内に飛空艇はアナハイムの上空まで来た。本当にあっという間だった。ここまでくればもう危険なんて何もない。自分たちは飛空艇から降りてそして空に目を向ける。いや、正確には空に届く程に聳えるその白い木に目を向けたんだ。

 あれがクリスタルウッド。世界樹と呼ばれる、世界の礎。空からも見えてたが、こうやって近くに来るとその圧倒的な神聖さがわかる。その時、自分を支えてくれてるセナが震えてるのに気づいた。彼女もクリスタルウッドに圧倒されてるのかもしれない。すぐに煩く叫ぶかと思ったが、全然そんな事せずに震えてる。それだけ衝撃だったんだろう。

 自分は躊躇ったが、彼女の肩を強く抱く。これからは二人で頑張っていくんだ。このくらい許されるよな?

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