美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
Δ168
「俺は……死んだのか……」
腹や腕を見ると、そこは一閃の光が走ってた。だが体はちゃんと繋がってて、腕も例外ではない。両腕はなくなってたはずだ。だが……ここにある。だからわかる。ここは魂の変える場所なのだと。周囲を俺を見る。沢山の小さな光が大きな光へと集うように流れてる。
「俺も、あそこへ行こうとしてる……か」
足が自然とそちらへと向く。いや、意思で足を無理矢理止めても、体から何かが出ていく。それは周囲と同じ光。この光は多分……自分自身。結局のところ、この世界の全てはあれの子だ。だから子は母の元へと帰る。それはとても自然な事。
「だが……認めれん!」
拳を握り力を籠める。だが、それでどうにかなるものではないようだ。だがそれでもどうにかしないといけない。死んだことに後悔はない。いや、僅かにはあるが、自分はずっと死に場所を探してた。彼らを守って死ねたのなら、それはいい死に場所だった。
だがただ死んだのでは、あの女の力になってしまう。死んだ後もまだ戦いは終わってない。
「俺は……無になろう。何物にも俺は――」
『父さん』
ふとそんな声が聞こえる。そして「アナタ」という声も。それは大きな光の向こうから聞こえる。いつかは同じ場所にあれると思ってた。どうやら家族は待っててくれたようだ。だが俺はそっちへと行けそうにない。
「すまない」
俺はそう光に向かって呟く。すると『わかってる』――ときこえた。それだけで、俺は救われた。悔いはない。家族はきっと再び世界に芽吹く種となるだろう。だが俺は違う。俺は世界の理から外れる。体内から流れ出る光の一つに目が留まる。
そこには若かりし頃の自分の姿があった。種で一番の強さに驕ってた自分。族長となり、種を戦いへと巻き込んでいった自分。だが、世界にはさらに上位の種など、いくらでもいたのだ。種は滅びた。俺の愚かな行いによって……生き残ったのはなまじ力を持ってた俺だけだ。
その次の光には進化を果たした時の自分がいた。だがその時の自分は泣いている。
(この力があの時にあれば……)
そう思わずにはいられなかった。一人になった俺はさらに戦いに明け暮れてた。もう帰る場所も守る者もいないのだ。だから死ぬまで、この命が燃え尽きるまで戦ってやろうという気持ちだった。腹が減ったら殺した奴らの死体をむさぼってた。
そうやってる内に、いつの間にか俺は進化を果たしてた。進化を果たしても俺は虚無感だけを抱えていた。そして俺は戦う事につかれた。だから森の奥に、世界の片隅に引きこもった。
違う光はここ数年の光景が映ってた。それはラジエル達との出会い。あいつらは僅かな獣人と共に逃げてた。そして一人は消え入りそうな曖昧な存在。今は姫と呼ばれて偉そうにしてるが、国をなくしてた影響で存在自体があいまいになってた。
そんな死にぞこない捨て置けばいい物を……ラジエルはそんな事せず、足手まといを連れたまま、太古の森を進んでた。そこに姫を救う場所があるらしかった。だが太古の森のモンスターは強い。どうして……あの時、彼らの前に出たのか……今ならわかる。
許されたかったからだ。太古の森のモンスターに追い詰められたラジエル達を俺は救った。許しを請うために、ラジエル達に同行して、仲間の振りをした。だがいつからか……振りの筈の気持ちが……いつのまにか……
「そう、本物になっていたんだ」
俺は自身の胸を貫く。死んでなお、ラーゼの力になんてならない。進化を果たしてる俺の力はきっとラーゼを更に強くするだろう。だから出来ない。
「共に、戦ってる……ぞ」
未来を仲間へと託し、俺は魂と共に世界から消え去った。
腹や腕を見ると、そこは一閃の光が走ってた。だが体はちゃんと繋がってて、腕も例外ではない。両腕はなくなってたはずだ。だが……ここにある。だからわかる。ここは魂の変える場所なのだと。周囲を俺を見る。沢山の小さな光が大きな光へと集うように流れてる。
「俺も、あそこへ行こうとしてる……か」
足が自然とそちらへと向く。いや、意思で足を無理矢理止めても、体から何かが出ていく。それは周囲と同じ光。この光は多分……自分自身。結局のところ、この世界の全てはあれの子だ。だから子は母の元へと帰る。それはとても自然な事。
「だが……認めれん!」
拳を握り力を籠める。だが、それでどうにかなるものではないようだ。だがそれでもどうにかしないといけない。死んだことに後悔はない。いや、僅かにはあるが、自分はずっと死に場所を探してた。彼らを守って死ねたのなら、それはいい死に場所だった。
だがただ死んだのでは、あの女の力になってしまう。死んだ後もまだ戦いは終わってない。
「俺は……無になろう。何物にも俺は――」
『父さん』
ふとそんな声が聞こえる。そして「アナタ」という声も。それは大きな光の向こうから聞こえる。いつかは同じ場所にあれると思ってた。どうやら家族は待っててくれたようだ。だが俺はそっちへと行けそうにない。
「すまない」
俺はそう光に向かって呟く。すると『わかってる』――ときこえた。それだけで、俺は救われた。悔いはない。家族はきっと再び世界に芽吹く種となるだろう。だが俺は違う。俺は世界の理から外れる。体内から流れ出る光の一つに目が留まる。
そこには若かりし頃の自分の姿があった。種で一番の強さに驕ってた自分。族長となり、種を戦いへと巻き込んでいった自分。だが、世界にはさらに上位の種など、いくらでもいたのだ。種は滅びた。俺の愚かな行いによって……生き残ったのはなまじ力を持ってた俺だけだ。
その次の光には進化を果たした時の自分がいた。だがその時の自分は泣いている。
(この力があの時にあれば……)
そう思わずにはいられなかった。一人になった俺はさらに戦いに明け暮れてた。もう帰る場所も守る者もいないのだ。だから死ぬまで、この命が燃え尽きるまで戦ってやろうという気持ちだった。腹が減ったら殺した奴らの死体をむさぼってた。
そうやってる内に、いつの間にか俺は進化を果たしてた。進化を果たしても俺は虚無感だけを抱えていた。そして俺は戦う事につかれた。だから森の奥に、世界の片隅に引きこもった。
違う光はここ数年の光景が映ってた。それはラジエル達との出会い。あいつらは僅かな獣人と共に逃げてた。そして一人は消え入りそうな曖昧な存在。今は姫と呼ばれて偉そうにしてるが、国をなくしてた影響で存在自体があいまいになってた。
そんな死にぞこない捨て置けばいい物を……ラジエルはそんな事せず、足手まといを連れたまま、太古の森を進んでた。そこに姫を救う場所があるらしかった。だが太古の森のモンスターは強い。どうして……あの時、彼らの前に出たのか……今ならわかる。
許されたかったからだ。太古の森のモンスターに追い詰められたラジエル達を俺は救った。許しを請うために、ラジエル達に同行して、仲間の振りをした。だがいつからか……振りの筈の気持ちが……いつのまにか……
「そう、本物になっていたんだ」
俺は自身の胸を貫く。死んでなお、ラーゼの力になんてならない。進化を果たしてる俺の力はきっとラーゼを更に強くするだろう。だから出来ない。
「共に、戦ってる……ぞ」
未来を仲間へと託し、俺は魂と共に世界から消え去った。
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