美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ165

 今の僕は言葉を伝えることができない。だから僕は指をさす。その指の先を見て姫が息をのむのがわかった。

「本気……ですかラジエル?」

 そういう姫に対して僕は頷きを返す。実際僕も「本気かよ」って思う。けど、シズルスがそれしかないといってる。権限をラーゼにとって代わられたシズルスには既にラーゼたちの船を見つける手段はないということだった。ここは空に浮く島で地上に比べれば格段に狭い……が、それでも狭すぎる程じゃない。しかも何やら異空間に色々と隠してたりするようだしな。

 まあラーゼたちの船が異空間にあるなんてことはないだろうが、追い詰められてる僕達にはしらみつぶし探す時間なんてない。となれば、もうシズルスの提案に乗るしかない。アルス・パレスはここからでもはっきり見えてる。道に迷うなんてことはない。まっすぐにあそこを目指せばいいんだ。

「皆さん! あそこを目指します! 急いでください!!」

 そういった姫の言葉に皆が従ってくれる。走り出した皆を援護する為に僕も再び上空に上がる。地上の敵はバッカスさんとセーファで何とか出来る。

(本当に大丈夫なんだろうな?)
(それは……わからなんな)
(おい!)

 こっちはお前の言葉を信じて皆を誘導したんだぞ!? これでやっぱり無理でしたっては言えないぞ。

(だが、可能性はある。アルス・パレスは我の直轄の場所だった。あそこにはバックドアが仕込んである)
(おう?)

 バックドアが何なのかわからない僕はよくわからない返事しかな出来ない。

(裏道があるということだ)
(なるほど、それでそれが潰されてない保証は?)
(そんなのはない)

 やっぱり賭けでしかないって事か。けど、その賭けに賭けるしか今の僕達にはできない。空中戦をしつつ、僕はアルス・パレスへと近づく。地上の皆もちゃんと向かってきてる。先についた僕はその壁を前に立ち尽くす。アルス・パレスには全周を囲むように厚い銀色の壁がある。

(開けれるのかこれ?)

 この壁ごとアルス・パレスはこの島にめり込んでる形だ。流石にとっかかりもないこんな壁は誰もが登れるものじゃない。それにこれじゃあ、なんの為に島にくっついてるのか意味がわからない。これじゃあ出入りできない。

(まだエデンの構築は完璧ではないようだ。これならバックドアが生きてる可能性はある)

 シズルスの言葉からきっとエデンが完成したらこの壁もなくなるものだと思われる。けど、それを待ってたらどうしようもないらしい。なら……この壁を壊さないと皆がアルス・パレスに入れない。

 僕はユニットを切り離し子機たちを放つ。けどやっぱりだが傷一つつかない。

(どうすればいい?)
(王の剣を使え。今の覚醒したお前と王の剣なら破壊できるはずだ)
(よし、なら一度体に戻って――)
(それは待て、お前はアンティカを操ってた方が都合がいい)
(だが、それじゃあ王の剣は使えないぞ?)
(いや、王の剣は魂に結びついてる武器だ。お前がどうなろうと魂と共に王の剣ある。感じろ)

 感じろと……いきなりいわれてもこまる。再びロボット達が迫ってるし、もたもたもしてられない。もうすぐ皆もここにつく。それなのに壁が立ちふさがってたんじゃ袋小路だ。僕は自身に意識を集中する。すると何やら熱い物を見つけた。

(これ……か? うお!?)

 何やら僕の体の胸の部分が光ってる。顔をシズルスに向けると奴は黙って頷いた。僕はその光に腕をさす。そして手を握ると確かに感触を感じた。掴みなれた感触だ。僕はそれを引き抜く。

(うおおおおおおおおおおおおお!!)

 そして手に現れたのは王の剣。連動するようにアンティカも剣を握ってる。アンティカが握ってるのは光だけのようだが……たぶん同じだろう。僕はブーストを噴射して壁に突っ込んだ。すると剣は確かに刺さった。それを確認して、僕は縦横無尽に壁を切り刻む。

 崩れ落ちていく壁。地面とアルス・パレスとの間に隙間が出来たが、あのくらいなら皆飛び越えられるだろう。アルス・パレスの中にも敵がいるのでは? と思ったが、そんなことはどうやらないみたいだ。皆の姿が見えてくる。僕は邪魔な上空の敵を殲滅しようと剣を向ける。けどその時、何かが落ちてきて上空のロボット達を薙ぎ払った。

 地面に刺さるそれは地上で走る皆の足を止めさせた。このタイミングでやってくる者……味方、な訳ないよな。僕はその姿を確認する前に子機たちを向かわせた。何であれ、邪魔される訳にはいかないんだ! 

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