美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ161

「持ちこたえろ!」

 僕はそう叫ぶ。目の前に迫る四角い箱を僕は切り裂いた。けどその,奥からは同じような形をした兵器が絶え間なく進んでくる。二足歩行も出来るのに、腕も使って四足でそいつらは長い手足をドタバタしながら進み、その比較的小さな顔から強力な光線を放つ。

 それは一撃で大地を穿つ程の攻撃だ。僕や一部の奴らは防げるが、なんせ数が多い。すべてを弾くことは出来ない。被害は確実に出てる。これでラーゼ側にも被害が出てればしめしめとも思えるが、三つのパレスか現れてから彼らはどこかにいってしまった。
 たぶんあのパレスに招かれたんだろう。流石にあそこには届かない。そして現れた機械の兵隊たち。アンティカ程の脅威ではない。だが、なにせ数が多い。そして奴らは止まらない。

(おい! こいつらを止める術はないのか! おい!)

 僕は動かなくなったアンティカへとそう念を飛ばす。けどかえっては来ない。それだけあの三つのパレスとやらの出現がショックだったのだろう。今アンティカの中にいる奴はこの地の全ては自分の中にあると言っていた。だが……多分だが、ラーゼの奴がそれを奪った。どうやったのかわからないが……

(神の器だ)

 ボソッと帰ってきたそんな言葉。神の器? それは何度かこいつがラーゼに向かって言ってた気がする。

(神の器の帰還がこの地に認められたんだ。そのせいで全ての上位権限があいつに……だが、なぜそれを奴が知ってる? 神の器事態に知識はなかったはず。まさか本当に……神が入っていたと……いやいやいや……神は我。我の筈だ!」

 そんな声を伝えてくるアンティカが上昇しだす。向かうは直上のパレスのようだ。だがアンティカの攻撃は届かない。どころか跳ね返された。その能力を駆使して人種の使う銃というものに似た武器を作ったと思ったら、それから光が出た。

 その筒よりも数倍でかい光だった。かなりの威力だと思われる。だが、それは簡単に……本当に簡単に跳ね返された。何とか間一髪で避けたが、銃を持ってた腕を失うアンティカはそのまま落ちていく。

(なぜ……なぜ……全てのシステムが我を切り離す。我が……我こそがここを守ってきたというのに! 旅立ってしまわれた主たちの代わりに……我が悠久の時をここを守ってきたのだ! 応えろ! 我はここのシステム管理プログラム『シズルス』ぞ!)

 落ちていくアンティカから聞こえる声。その声は僕にしか届かない。薄々は気づいてた。あいつは生物とか、そんなんではないと。あいつはここを管理維持する為に生み出された存在。この地の住民たちがいなくなっても、あいつはたった一人でこの地を守ってた。

 こんな誰もいない場所でたった一人……長い時間の中で、あいつは自分を手に入れたんだろう。その自分は結構ろくでもない奴だったが……その力の全部、守ってきた物の全てが、あいつからラーゼに移った。

――わかる――

 全てを奪われる痛みをあいつは……シズルスは感じてる。僕だってライザップがなくなったときは同じような気持ちだった。あいつは誰にも知られるような存在じゃなかったはずだ。自我を持ったのだったきっとイレギュラー。

 でも僕にはあいつの声が聞こえる。その気持ちもわかる。このままここにいても踏みつぶされるのは目に見えてる。

「撤退だ……アンティカを回収し撤退する! 船へ向かえ!」

 僕は敵のいる反対側へ走る。ここは山の中腹に建てられたような祭壇だ。山からせり出して作られてる。つまりはこっち側は……崖だ! だが、僕達なら大丈夫。山の腹には敵が跋扈してる。一刻も速くここから撤退するにはこれが一番だ。僕の行動に皆が続く。

(待ってろ! 僕はお前を見捨てたりなんかしない!)


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