美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ150

「ちっ」

 思わずそんな舌打ちが出る。でもそれも仕方ないよね。だってなんで目の前でイチャイチャしてる光景見なきゃダメなのよ。二人とも互いを求めてるみたいな雰囲気を出しちゃって……たがいがいれば強くなれるみたいな思いを抱いてそうな感じだ。

 ほんとイラっと来る光景。二人ともそんなに私を倒したい? そもそも何が一番イラっと来るかって私を介して二人が思いを重ねてるところだよ。私、利用されちゃってるじゃん。私が一番嫌いなことだよ。誰かに利用されるとか……

 声と共に、思いも重ねて剣を伸ばしてくる二人。ラジエルの剣は今まで一番の輝きを放ってる。けど力が見える私的にはまだ甘い。確かに力は強くなってる。それは確実だ。けど、それは垂れ流してるみたいな状態にみえる。つまりはまだまだ操れてはいない感じ。
 二人分の思いでもラジエル程度だとここらへんが限界なのかもしれない。

「ん?」

 そう思ってると、力がなんか急に収束しだした。無造作にあふれ出てた力が刀身に綺麗に纏われ、密度を高める。目の前のラジエルやうさぎっ子に何ら変化はないみたいに見える。じゃあこれは何? 感覚的にやってるとか? 私も大体そうだし、ありえなくはないかもしれないけど……それにしたって完璧すぎる制御じゃない? 

 私を守るように理がラジエル達の攻撃を阻む。さっきまでなら、すぐに弾かれてたその剣は、今は弾かれない。

(むむ……)

 今は何が力を支えてるかは後回しの方がいいかな? 理にこの剣は対抗してる。理とは神のルール的に絶対な物の筈なのに……それを超えてくる気? ラジエルの癖に? うさぎっ子がいるから? そんなの許さないよ。私はマナを溢れさせて二人を吹き飛ばす。

 本当はこの距離で力をぶっ放したかったんだけどね。さすがにゼロ距離に近いさっきの距離ならラジエルを消し飛ばせたと思う。うさぎっ子さえいなければね……

(あっ、しまった。どうせうさぎっ子は理で守られるじゃん。ラジエルだけ殺せたのに!)

 今頃気づいた私。自分で理を書いたのに、まだ私の中にそれは定着してない。今のは本当にラジエルを殺せる一世一代のチャンスだった……落胆だよ。てかうさぎっ子はわかってたからラジエルの元まで来たのかも。いざとなれば理があるし、盾となる気だったのかもしれない。あり得るな。

 うーん実際こうなると、敵味方区別なく理が発動するのは厄介だね。まあ可愛いはそれだけ罪深いってことだよね。こればっかりはしょうがない。私も世界から可愛いを摘みたくはないし。私はちらりと戦場を見る。炎の彼女は理がちゃんと有用と理解したのか、こっちの部隊の中心に行っては炎で蹂躙してる。いつの間にかロリッ子も結構前に出てきて魔法で支援してた。

 そこにこちらの魔導士たちも魔法を打ち込むが、ロリッ子にも理は適用されてるから意に介してない。こっちもキララも全面に押し出した方がいいかな? アナハは……適用されるか微妙な処だしね。ティアラは間違いなく適用されるだろうけど、結局人種並みの使い手だからね。アナハやキララ程、戦えるわけじゃない。アナハも実際そんな戦える人材じゃなかったが、あのスナフスキンの陣を盗んでからは魔法効率が凄まじい進化してるから理さえ働けば多少の無茶も出来るんだけどね。

 アナハは愛嬌はあるよ、愛嬌はね。キララも美人とかではないが、中の上か、上の下かくらいはある。キララはいろいろと注目されることが多かったからか、ここ数年でぐっと女らしさみたいなのを磨いてたんだよね。外見上だけだけど。
 アナハはそんなキララの陰に隠れるようにしてたから女としてあまり磨かれてないのもあるね。

 こっち側で前線で戦ってる中で理を生かせるとしたら亜子なんだけど……その亜子はモノクロのアンティカにゼロごと絡めとられてた。どうやら攻撃が効かないから、動きを封じる手に出たようだ。けど亜子はハステーラ・ぺラスで空間移動できるはずだが? 空間まで固定でもされてるんだろうか? 

(なかなか劣勢かもしれない?)

 ズルい、人種はそもそも種としてのランクが低いから理に守られる対象が少ないじゃん。見た目は他種族の方がいいんだよ。もしかしたらこっち側にも誰かが理に守られる手かもしれないが……女の子いたかな? これは帰ったら理に守られた女性中心の部隊を作る必要がありそうだよね。

 まあここを無事に手に入れたら……だけど。そんなことを考えてると、ラジエルは剣をキューブにさしてた。そしてその剣に集まるようにキューブの表面の光が走ってる。まるで何かをインストールでもしてるかのような光景。

 引き抜いたとき、剣には光の部分が追加されて刀身が伸びてた。あれがあの剣の本来の姿? なんか……ビリビリした感じを肌に受ける。まさかとは思うけど――

 ――振りぬかれたその剣が、私の髪をいくつか散らす。それはまさに理を超えた証明。それだけじゃない。私のマナの防御を紙屑みたいに切り裂いた。

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