美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ141

 死んだ……わたしはそうおもった。ごめんなさいお母さんお父さん。私はどうやら帰る事は出来ないようです。もう私の中には家族の顔さえ殆どない。マナがこちらの世界に染まって薄くなってるのもあるが、向こうの記憶を外部へと移動してるってのもある。

 なくなるよりは……とおもってやったことだ。それをしなかったら、今頃私は向こうの世界の事を全て忘れてしまっただろう。だから……後悔はない。けど僅かだけど寂しいと思った。死に間際にも、家族の顔さえ思い出せないんだから。

目の前に現れた腕から何かが放たれる。それが何なのか私にはわからない。わからないが、それが私に死をもたらすものだという事はわかる。こんな事考えてる場合じゃないのに……生きる為に何かをやらないといけないのに……なにもできない。けど――

キィィィィィィィィィン

「え?」

 ――私に死をもたらすはずだった力は私に当たる直前に何かに弾かれるようにして消え去った。私は何もしてない。出来なかった筈だ。だから死ぬはずだった。けどどうやら私は何かによって守られたらしい。

「何が?」
「ふむ、やはりか」

 手から何回も同じような攻撃が放たれるが、私に届くことはない。手は諦める様に目の前から消える。

「何かよくわからない……けど!!」

 私はラッシュをかける。もうすでに空間の壁はない。奴の攻撃が怖くないのなら、後はこっちの攻撃を当てるだけだ! 何が私を守ったのかはわからないが、この絶好のチャンスを逃すくらいなら、とっくに私は死んでる。甘い世界じゃないんだから!

「世界の理が我の邪魔をするか!!」

 よくわからない事を言って手をこちらにかざす奴。その瞬間、こっちの武器が奴の空間に飲まれる様にしてひしゃげた。私はとっさに剣を手放して拳を突き出す。だけどそれは見えない壁にぶつかった。でもまだだ! 更に反対の拳。更にそれでもだめなら、私はゼロの頭を突き出した。

 でもその全ては阻まれた。けど私は知ってるよ。消耗しない力なんてない。そうラーゼ以外には!! 

「ゼロ!!」

 その瞳が光り押し込む。何者も空間干渉なんて普通は出来ない。けど、奴の消耗に、こちらは奴の空間を破る術を既に持ってる。ガラスが割れるような音と共にゼロの頭が動く。そしてその頭は奴の体を吹き飛ばした。咄嗟に腕でガードしたようだが、その腕は折れ、奴はキューブの上へと落ちていく。

 初めて与えたダメージ。落ちた奴にグルダフさん達が駆けていく。息の根を止める。それは戦いにおいて当たり前の事だ。生かしておいたらどんな反撃を食らうかわからない。それで大切な者を失う描写は向こうの世界でよく見た法則だ。

 私も奴の反撃を警戒して近づく。けど何やら様子がおかしい。

「このっ……近寄るな! 我は……我は……この世界の神になるんだぞ!」

 そういって近づく者達の攻撃をなんと防ぎながらも、最初の余裕を持ってた姿なんかなくなり、逃げ惑うのに必死な姿。それはまるで……小物の様だった。
 皆の攻撃に押されてどんどんとキューブの端に追いつめられていく奴。もう命運は尽きたのは明らかだった。転んで、躓いて、みっともなく喚き散らす。その姿は神なんかじゃ決してない。

「そうだ! こい、我を守れ!!」

 何かを思い出した様にそう叫ぶ奴。すると奴の背後に白銀のアンティカが現れた。どうやらオウラムの奴らはまだ倒してなかったようだ。傷ついてはいるが……こいつは厄介。

「ん?」

 そう思ってると、白銀のアンティカの更に後ろから、フレームだけの腕の腕が伸びてきた。そしてその手は白銀の顔を掴んで締め上げてく。

「なっなんだ!?」

 奴もこの事態は想定してなかったのか、おどろいてる。白銀はその背後の奴に攻撃を加えるために剣を向けるがそれよりも早く、漆黒の装甲に包まれた腕が白銀の胸を貫く。そして後ろから現れた所々に漆黒の装甲を見に纏ったアンティカが更に白銀の首筋にかみつく。アンティカに口なんかあったか? 

 と思ったが、噛みついたんだからあったのだろう。白銀の目の光が次第に失われて行く、それと同時に、白銀の装甲が噛みついてる奴に取り込まれてく。

「なに……なんなの?」
『分かりません。ですが……新たな脅威が誕生しようとしてるのかもしれません』

 ゼロのその言葉に私は納得する。なにはともあれ……あれはふつうじゃない。白銀も漆黒も普通のアンティカではなかったが、二機アンティカの装甲を奪ったあのアンティカは更に普通じゃない。まるで……生きてるよう……

「おおおお、お前はああああああ――――がはっ――――ああぁぁ……」
 
 奴はモノクロっぽくなったアンティカに掴まれた。そして――――

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