美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ139

「うさぎっ子……どうして……」

 私はそんな言葉を呟く。するとうさぎっ子が一つ薄く笑ってこういった。

「どうして? それ必要なの? 私達は敵なのよ。それをいい加減認めなさい。私はあんたの物になんてならない」

 うさぎっ子はそういって私を睨む。その目には激しい激情が宿ってる。けど違うんだよ。

「違うようさぎっ子」
「え?」
「私は何されたってうさぎっ子を諦めたりしない」
「私の方がそっちで死にかけてる人種よりも大事って事?」

 そんなうさぎっ子の言葉に後ろの皆が息をのむのが聞こえた気がした。いや実際には聞こえてないけどさ、こんな反応してるんだろうなって想像が頭をよぎる。

「違うよ。私、皆好きだもん。可愛い子は皆好き。嫌いになんてなれない。だから皆私の物にしたい。それは勿論うさぎっ子もだよ」
「あんなことをした私を?」
「そうだね……さすがにカチンと来たけど、やっぱりうさぎっ子を見ると、欲しいって思うんだよね。それにカチンと来たのはこんな世界にだよ。争いなんて丁度いい刺激くらいでいいのに……私達のような美少女にはそうあるべきだと……思わない?」
「理解できない……何を……いってるのですか?」

 激情の瞳が、いつしか戸惑いから、少しの怯えみたいになってるうさぎっ子。何も心配する事なんてないのに……だって私は可愛い子達が大好きだから。うさぎっ子は悪くない。そうさせる世界が悪い。自分が悪いじゃない――社会が悪いみたいな言い方だけど、私のは真実だから仕方ない。

 そこら辺のむさい奴らはいくら死のうがどうでもいい……というか、しかたないと諦めもつくけど、美少女はダメだ。

「何をしようとしてる!!」

 ロリッ子の錫杖が音を奏でる。奇妙な音だ。まるで脳を揺さぶられるような……けど、無駄だよ。今の私はフルでクリスタルウッドと繋がってる。世界の隅々まで、今の私ならその意思を通せる。

「大丈夫だよ、ロリッ子も可愛いから。ちゃんと私の物に入れてあげる」
「――つっ!? うあああああああ!!」

 掲げた錫杖の更に上に魔力が渦を巻いて集まってく。けどそれは一向に発動に必要な程溜まる事はない。

「なん……で? 私のマナまで!!」

 私は腕を大きく開く。すると風がおこった。ここだけじゃない。世界へと吹く風だ。そして私の目には星を包む魔法陣が見える。

「届けてクリスタルウッド――――『美少女は、死んじゃダメ!!』」

 その言葉は今日という日、世界の理に追加された。

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