Δ125

「うさぎっ子！！」

　私はそういってうさぎっ子を揺さぶる。すると「げほっ」てな感じでうさぎっ子が血を吐いてこっち睨んでくる。

「バカ……」

　そんな一言が帰って来た。やっぱり安静にさせてた方が良かったのだろうか？　けどほら、死んでるかどうかわかんないし。

「ああ、おっぱい」

　ミスった。よく考えたら揺さぶらずにうさぎっ子のおっぱいに顔を埋めればよかったんだ。なんて勿体ない事を私はしたんだろう。一生の不覚だ。

「ほんと……バカ」

　今の一言で私が何を考えてるのかわかったのか、うさぎっ子の私を見る目が幾分か更に冷めた気がする。まさかあれで理解できるとは……私達はやっぱりとても相性がいいのではないだろうか？　そう思うと私は嬉しいんだけど……こまった事に私は回復魔法とか使えない。

「うさぎっ子、私を庇ってくれたの？」

　あのラジエルから？　うさぎっ子はラジエル側かと思ってたけど、やっぱり私側だったんだね。感動だよ。

「そんな……訳、ないでしょう。誰が……あんたなんか」

　どうやらうさぎっ子は私を庇ったのではないみたいだ。悲しい……けどまあ当然か。多分私達は抱きあったまま倒れてたんだろう。それでうさぎっ子が邪魔だったからラジエルはうさぎっ子を……んん？　そもそもラジエルってそんな奴だったっけ？　

　まあ数年経ってるし、私が知ってるラジエルとは変わったのかもしれない。さっきから私を見るラジエルの目がなんかギラギラしてるし。あの目を私はしってる。私を初めて見て恋に落ちた奴の眼だ。絶対に手に入れてやる……的な目。
　私はよくあの目を向けられるからわかる。それにねちっこく私の色んな部分を見てるしね。キモイ……ラジエルってこんなキモイ奴だったっけ？　表面上はイケメン紳士な印象だった筈だけど？　あれかな？　ライザップがなくなって立場とか失ったから取り繕うのやめたとか？　あり得そうではある。

　でもそんな奴にうさぎっ子がついてくだろうか？　こんなキモイ奴をうさぎっ子が選んだとか嫌なんだけど？　てか、私のプライド的に駄目だ。ラジエルはイケメン紳士だからうさぎっ子があの外見とかに騙されて私の元を去ったと思えば、まだまあ納得出来た。

　結局の所、私は女でうさぎっ子も女なんだ。男に靡いちゃうのは生物学上仕方ないと思える。それがイケメンで表面上良い奴なら悔しいが納得も出来るってものだ。けど今のラジエルからはキモイ感じしか伝わってこない。
　私よりもこんな奴を？　――が、素直な感想だ。今まで一緒にいたうさぎっ子を散々堪能してただろうに、私という女を見るなりうさぎっ子を用無しとばかりに殺そうとした。それって許される事じゃなくない？　こいつは私の敵だが、全ての女の敵だ。

　私はそう決意してラジエルを睨む。あまりの怒りに私からは再びマナがわずかに漏れてたかもしれない。