美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ123

 苦しかった胸の痛みが和らいでいくのが感じれた。何か大きなのが出た後からそれは顕著だったけど、今はもう苦しみはない。迷うように出て行ってたマナ達が、再び淀みなく回りだしたのを感じてる。

「良かった」

 私はそう呟いてこの安らぎに身を任せようかと寝がえりを打つ。確かうさぎっ子と抱き合ってた筈だが、今は手近にうさぎっ子はいないみたいだ。寧ろここがどこなのか……大量のマナに包まれた場所だ。もしかしたらここは私自身の中なのかもしれない。

『良くはない。危うくやられる所だったぞ』

 なにやら物騒そうな声が聞こえた。私は片目を開けてみてみると、そこには見覚えのあるドラゴンが居た。

「ゼル……やっぱりでてったのはあんただったんだ」

 純とは違うマナが出ていったと思ってた。てか、この島にはゼルもいる筈だし、マナとしてじゃなく本体が出張ってくれてもいいんじゃないだろうか? 時間があれば、ゼルと出会ったあの場所に行こうかと思ってたんだけど……むこうから来てくれたらその手間も減るしね。

『我から出向けとは……そんなことを考えるのはお前くらいだ』

 そういってゼルはその巨体を丸めてくる。私と一緒にだらだらしたいらしい。まあいいよ。許してあげよう。

『対等な者がいるというのは良い物だな』
「そうでしょ? 良い友達に恵まれたわね」

 同じように寝転がってても私は結局ゼルを見あげてしまう。まあそれほどに元のサイズが違うんだから仕方ないけどね。てかさっきから私の心の声が駄々洩れである。魂の回廊で繋がってるし、そういうものなのだろう。

「ってちょっと待て。私あんたの心わからないわよ」

 気づいた。だって私にはゼルの心の声は聞こえない。まあそこまで興味もないし、誰かの心の声が勝手に聞こえてくるってのも煩わしそうだから別段いいんだが、なんかちょっと悔しい。

『聞こえてるではないか』
「どこが?」
『こうやって我と話せている』
「ああーそういう事?」

 確かにゼルは喋ってるというよりも伝えてると言った方が正しい気はする。それならば、私もゼルの心を聞いてるってことなのだろうか? なんか納得できないような? 

『それよりも貴様の事だ』
「私の事?」

 なんのことだろうか? 閉じてた目をこちらに向けてくるゼル。ドラゴンの目で見つめられると佇まいを正ちゃいそうだけど、私はこの態勢を維持する。ゼルもそれが良さそうだし。これこそ対等だよね。

『貴様は自身の正体に気づいたのではないか?』
「私が神だとかいう事?」

 ゼルはなかなか次の言葉を伝えてくれない。実際私は自分が神だとは思ってない。神をも超える美少女だとは思ってるがね。私にとってはそっちの方が大事だ。神だから私よりも美少女でもいいよねっては思えない。

 最初にこの世界に降り立った時は別に神とか意識になかったし、かなり可愛いとは思っても一番だとかなんだとかはそこまで意識してなかったが、今はもう一番が普通だし。今更神にしゃしゃり出てほしくない。

 なので別に神かどうかはどうでもいい。なので私は何も言わないゼルに続けてこういうよ。

「ゼルは神を知ってるの?」

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