美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ83

 私は摘まん妖精をじっと見つめて……するとチクチクしてたその痛みの中に、とても嫌な何かを感じた。その瞬間私は妖精を握りつぶす。普通の女子だったから、きゃ!? っとか言って投げるくらいが普通なんだろうけど、そこはほら、私だし。


 それに私ほどの美少女ともなると、何やったって可愛いや美しいに変換されるものである。普通はあんな幻想的な妖精を握りつぶして悦に浸ったような表情をした奴を見ると、ドン引きかもしれないが、私がするとほら、グルダフ達は恍惚の表情してるよ。


 ちょろいちょろい。まあ一人うるさい奴いるけど。


『ちょっとラーゼ! なんて事するのよ!』


 それは籠から音声飛ばしてるキララだ。まあ私も握りつぶすのは実際どうかと思ったんだけど、気づいたら……ね。なんかそれだけ危険に感じたんだろう。私はそういう時の直観は大事にしてる。


 だから後悔はない。


「気を付けて、こいつら不気味よ」
『はあ? 無害なんですけど?』


 どうやらキララの奴、何匹かあの妖精捕まえてるな? あのアホ……と、思わなくもないが、ちょうどいい。


「アナハ、ちょっと魔眼でそいつら見てみて」
『なんでそんな事しなきゃいけないのよ?』
「私はあんたじゃなく、アナハに言ってるの。やってくれる?」
『あっ……はい』


 うるさいキララはむーと不満たらたらだが、アナハは私に対して素直だ。ティアラは……なんかあの子怖い。まあ綺麗だしとっても私好みなんだけどね。とりあえず今はこの妖精? いや悪魔かもしれない物の正体が問題だ。


「どう?」


 私はそう通信越しに言うよ。今もなお、この妖精は私の籠の周りに大量にいる。これが何かからの攻撃……だともかぎらないわけで……あの嫌な感じがなかったら、私だけ絶景一人占め――とか優越感に浸れたんだけどね。


 私の美しさに誘われてきてるのね……とかさ。けどいまは不気味という思いの方が強い。アナハの言葉を待ってると、いきなりあの子が出さないような声が響く。


『があああああああああああああ!!』
「アナハ!? ちょっとどうしたの!!」


 私はぶつかる勢いでマイクに喋る。けどどうやら向こうは大変らしく、こちらに返す余裕はないみたい。しょうがない。


「グルダフ、キララ達の籠へ! アナハが大変なの!」
「了解しました!!」


 私はすぐさまグルダフを向かわせる。籠は大体水に浮いてるから、グルダフは小隊を率いてそこまで泳ぐ。


 くすくす、ぷくく――


 周りからそんな音が聞こえる。なにやらさっきより楽しそうに感じる。そろそろうざったいなこいつら。私はそう思って、マナを溢れだして妖精共を吹き飛ばす。なんとなく、そうしたんだけど、なんと今度はこの空間にある透明な木々が何やら反応しだした。


(次から次へとなんなのよ……)


 ちょっと面倒になって来たぞ。こっちが本命な事を祈っとくよ。

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