美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ82

 滑り落ちた私達。けどそのおかげであの崩壊からは免れたみたい。更にこの島の内部に来られたみたいだから、逆に良かったのかも。


「ここ――は! わあ!」


 じりじりとしてた籠のモニターがパッと外の風景を映し出した瞬間、私はそんな純粋な声をあげた。だってだって、この光景に心躍らない女子はいないよ。そこは水と花が調和した場所だ。反円球状に見える空間は何か所からか、滝の様に水が落ちて来てる。多分私達もアレのどれかから落ちてきたんだと思う。


 そして綺麗な透明感溢れるこの湖には木が生えてた。透明な色をしたそれなりにデカい木だ。その木は光を発してて、その光によってここは明るい。


「なんか、いる?」


 あの木の周りには妖精の様な見た目の何かが踊ってる。その何かが水面に波紋を広げると花が咲いてた。その影響か、この湖には花がいっぱい浮かんでる。


「ラーゼ様!」


 そんな声に反応して、声の方を見るとグルダフが木の幹の足元にいた。けど流石にそこは既に人がいっぱい。私が入る隙間はない。まあこの多脚籠なら蜘蛛の様に木の幹にへばりつく事も可能だけど……なんかそれって優雅じゃないじゃん。


 私以外がそれやるのは別にいいけど、私はちょっとね……まあ籠の中にいたなら、どうせ私の状態なんて見えないけどさ。とりあえず沈むことはないみたいだし、水の中でも問題はない。


「うん?」


 あれ? 水の中からグルダフの方を見てたら気づいた。どうやってあの木がどうやって生えてるのか、実は疑問だったのだ。だって水から普通に生えてるんだよ。もしかしたら、もっと下から根を生やして水面から顔を出してるのかな? とかも考えられたけど、実はこの木、微妙に動いてるからね。


 滝の影響で水が動いてる。そのせいか、木も動いてるのだ。水の底の地面に根を生やしてるのなら、木自体が動くなんて事はないはず。てかグルダフ達が乗ってる場所に既に根は見えてるんだよね。水中からみたら、あの透明な木が何に根付いてるのか見えた。


 それは四角く黒い箱? のような物だ。いやいや、栄養とどうなってるの? といいたいが、ファンタジーなこの世界では野暮ってものだ。きっとあの箱が超物体か何かなんだろう。


「まてよ。あれって……」


 そういえば、あの羽持ちの奴らが見せてきた映像の中にあった箱ってあれっぽいんだが? 実は目的の場所に既についた? けど、雰囲気とか違い過ぎるんだよね。それに私が魅せられた場所はもっとあの箱が山積みされてた。


 こんな木の土台の様にはなってなかったしね。とりあえず私は何かわかる事はないかとグルダフが居る木の方に近づく。流石にみんなそこに集まってるわけじゃなく、同じような場所に点々としてるけど、
グルダフが一番近いからそこを目指すよ。


 すると何やら、近づいてきた。それはさっきからここに居た妖精? のような物だ。


「なんだ貴様ら!? 図が高いぞ!!」


 グルダフの奴が警戒しながらそういうけど、妖精は気にせずに私の籠の周りに集まってくる。妖精とかいってるけど、光が、皆が知ってる妖精の形をしてる様に見えるだけで、実体感はない。生命なのかどうかも怪しい。


 てかなんで集まってきたのか? だってグルダフたちの周りには全然いない。なのに私の周りにだけ……いや、違う。どうやら亜子の乗るアンティカの周りにも集まってるようだ。二人の共通点は異世界からやってきたって事? 


 そんな考察してると、いつの間にか妖精は籠の中にまでいた。どうやらこいつらに物理的な壁は意味がないようだ。すいすいと入ったり出たりしてる。


「何か……いってる?」


 踊ってる彼らが近くにいると、何やら囁き声が聞こえる気がする。けどそれは気がするレベルだ。なんていってるのかは正直わからない。私はそんな妖精の一人をつまみ上げてみる。するとジタバタしだした。
 なんか可愛い……そうおもってると、なにかチクッとした。別段妖精が何かしてる訳じゃない。けど……なにかちくちくする。これは一体? 私はつまみ上げた妖精をじっとみる。じっと……じっと……

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