美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ55

「困った……」


 私はそう呟いて途方に暮れる。だって軒並み高い場所は崩壊してしまってる。遠くに見えるゼルとアンティカの戦いはどんどん大規模になってきてる。はっきり言ってここが焦土と化すのも時間の問題な気がする。こうやって見るとゼルって超絶強いね。既にアンティカが虫の様にワラワラと群がってるのに、ゼルは余裕そうだ。ゼルが咆哮するとアンティカの動きは止まり、尻尾をひとなでするとアンティカがバラバラになっていく。まあまだ尻尾は優しい。


 だって周囲にそんな影響ないからね。爪や牙はエグイ。爪を振り下ろすと、空間まで裂けて割れた空間に引き裂かれなかったアンティカまで飲み込まれるし、牙をすり合わせると何故か空間がねじ曲がってアンティカ達がすり鉢で潰されたみたいになる。しかもその影響か、空に何やら変な線が走っちゃってるしね。もうそれは線としか表現できない物なんだ。あれは何? と聞かれたら線としか言いようがないみたいな? 空中に線があるってとても違和感なんだけど……あれが何かはほんとわかんない。


「でも……ゼルってここの奴らと仲良かったんじゃ?」


 まあ明言しないけど、私的にはそうなのかなっ思ってた。だってゼルはここでリラックスして寝てる訳だし……しかもここのロボット達の攻撃対象外だったからね。でもまさか、こういう事? 和解したんじゃなく、諦めさせたみたいな感じなのかな? あいつには関わっちゃいけいなみたいな。けどあの戦闘を見てると、このまま約束の地が滅んでもおかしくない。いやほんと。だってもう滅茶苦茶だよ。戦闘の規模がおかしい。


「どうしよう……にげたい所だけど、あの戦いじゃ意味ないような気もするよね」


 だってゼルの攻撃はこの大地と空間に大きく干渉してる。どこに逃げようと、多分一緒だと思える。だからってあそこに進んで近づきたいかって言われると……御免だよね。アンティカだけじゃなく大量のロボットまでも投入されだしてるけど、有効打にはなってないみたい。大体ロボット達は突貫しかしてないしね。そして爆発。取り付ければめっけもんみたいな? その後ろにアンティカは下がって遠距離をしてる。


「いや、何か魔力が収束してる?」


 大規模な事をしようとしてるみたい。やっぱりどこかに隠れてた方がいい気がする。どうやらロボット達は時間稼ぎ要員みたいだね。それは功を奏したのか、奴らの術が発動する。眩い光と共にそれは形を成していく。上半身だけを現すそれは光の巨人? なんかどことなくあの水の中でみた巨大アンティカに似てるような? てかほんとデカい。ゼルよりも大きい。光の巨人は大きく体を捻らせて拳を握る。その周りに幾重もの陣が展開される。


「おいおい……」


 そんな言葉が思わず漏れる程の陣の数。てか、陣の連結が膨大過ぎてそれは一つの柱に見えるほどだ。そして巨体に似合わぬ速度で拳が消える。次の瞬間、爆風と共に視界の端でゼルが吹っ飛んだのが見えた。そして私の体も吹っ飛んでた。

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