美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ53

「あれ?」


 私は気づくと知らない空を見あげてた。それは灰色だ。灰色の空はなんだか物悲しい。


「どこ……ここ? 皆は?」


 周りを見ても私以外には誰もいないみたい? てか全部灰色だ。空だけじゃないみたい。まあそんな中でも私は彩を保ってるのを考えると、どうやら私という色は奪えなかったようだ。


「確か、でっかいアンティカの奴に包まれて……」


 幻影とかだろうか? マナを溢れ出せば脱出できる気はする。私のマナは規格外だからね。こういう精神干渉的な奴は魔力を流しこんで見せてる云々教わった。だからこういう技には魔力を乱す方法が効果的なんだとか。魔力を乱すとかはよくわからないけど、干渉できない程のマナを出せば多分問題ない。多分ね。


「じゃあ早速――ん?」


 何かが頭上を飛んでく。あの迫力……それに続いてきた風圧……


「ゼル?」


 そういえば折角ここまで来てるんだし、ゼルに会おうと思ってたんだ。忘れてた訳じゃないよ。でも皆がいたら怖がるかな? とか気を使った訳だ。余裕があれば諸々が終わった後にゼルの所にでも行ってみようかとおもってた。


「向こうに何かあるのかな?」


 ゼルは友達だし、魂の回廊で繋がってる。もしかしたら何かを伝えに出てきてくれたのかもしれない。私は今の状況をそこまで深刻に捉えていない。だからまあちょっと行ってみようかな? と思った。私は森の中にいる遺跡? みたいな所にいたからとりあえずゼルが飛んでった方に向けて歩き……


「これは乗ってもいいのかな?」


 何やら楕円形した上半分が透明な物があった。透明な部分から覗くと中には一人掛けのシートがあるからこれは乗り物の類ではないかと思ったのだ。タイヤとかは見えないけどね。まあきっと浮くんでしょう。でもこれも灰色なんだよ。動くのかな? とか思って触れてみると、なんと色を取り戻してくれた。


「私が触ると元に戻る?」


 とか思って色々とそこら辺の物に触れてみたけど、どうやら全部が全部、元に戻る訳ではないみたい。まあとりあえず乗り物が確保できた事は大きい。森の中を動き回るとか汚れちゃうじゃん。私の服は相応に高いのだ。成金の趣味はないけど、良い物を着るのは偉い立場とはしては当然なのだ。そして私に泥臭いとか似合わない。世界が求めてない。美少女はいつだって美少女でないとね。


「どうやって乗り込むのこれ?」


 多分この透明部分が開くんだと思うんだけど……とりあえずなにかスイッチでもないかとベタベタ触る。けど別段何かあるようでもなかった。あれかなこの世界では魔力に反応する物とかよくあるし、そのパターンはそれぞれらしいから生体認証みたいなのに使われてたりする。てかアンティカがそうだし……それならこれもそうかも。


「誰かが先に登録してませんように」


 だってそうだと使えないしね。けどきっと大丈夫だよね。だっておあつらえ向きにある訳だし。極力抑えてマナを出す。直ぐに制御できなくなるから規格外のマナも考え物だよね。まあ魔法の知識を少しは得た事でちょっとは制御出来るようになったほうだけどね。


ビギッ!!


「げっ」


 なんか変な音がした。極力抑えたんだけどな。けどどうやら青い光が走ってるし、起動したみたい。透明部分も開いた。私はそこに乗り込むよ。窮屈かと思ったけど、別段そんな事はない。私が子供ってのもあるんだろうけど、シートも座り心地いいし、結構いい感じだ。座ったら勝手に透明部分は閉じてその部分に色々と情報を表示してくれる。どうやらこれは自動運転のようだ。周辺の地図情報も現在地と共に表示してくれてる。タッチに対応してるから、とりあえずゼルが向かったであろう方向をタッチして、運転開始と読める文字をタッチする。


 すると一瞬の浮遊感と共に、それは滑るように進みだした。これはとても快適だ。明らかに私達の籠よりも高性能だね。ちょっと悔しいと思いつつも楽できればなんだっていいやと私はシートに背中まで預けてゆったり進む。

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