美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ36

「ラーゼ様!!」


 そんな声が聞こえるけど、こっちはそれどころではない。何が起こってるのか、ちょっとここからではわからない。いや、なんとなく察しては出来るけどね。どうやら私……誘拐されてるみたい。蜘蛛の奴が行動パターンを変えて真っ先に狙ったのは私だ。私は籠の中にいて一度もその姿を出して無いにも関わらずにこの蜘蛛は私を迷わずに狙った。何故に私なんだろう? なんで、私の事を? わからない事が多い。そもそも私をどこに連れてこうとしてるのか……だって殺す気なら私の所に降ってきたらよかっただけだ。


 まあそれくらいで私は死なないけどさ……けどそれをこの蜘蛛が知ってる訳ないよね? それならこの質量が降ってくるのは普通に脅威だと思うはずだ。実際私の周りにいた奴らはそれなりにダメージを受けた筈。あの場でもっと暴れれば、こっちの戦力を壊滅させることだって出来なくはなかったと思う。けどそれをせずにこいつは私を籠ごと攫ってる。元々の目的からして私だったのだろうか? けど私だって歓迎される心当たりはないんだよね? だってそれならここから逃げる事もなかった気がする。


 ここの奴らに追われたのだって、ゼルから力を受け取った後だったし、ゼルの力があれば同胞と思われる訳でもないと思うんだよね。


「うおおおおおおおおお!! その方は貴様の様な奴が気軽触れていい奴ではない!!」


 別に触れられてはない。だって籠の中にいるし。けどグルダフには関係らしい。グルダフはその斧を振りかぶる。けどゼロがそれを防ぐ――かとおもったら、ゼロは何か阻まれたようだ。多分カメレオンたちだろう。あいつらは見えないから奇襲するのに最適だ。まあアンティカ相手には一度しか効かないだろうけど。けどその一度でよかったみたい。グルダフの斧は自身の数倍はあろうかという蜘蛛を切り裂く。流石はグルダフ。そこらの雑兵とは力が違う。


「って、きゃあああああああ!!」




 そんな事を思ってると私の籠が放りなられた。それは最後を悟った蜘蛛の最後の抵抗だったのだろう。


「なんと無礼な!」


 グルダフの怒りに震える声がきこえる。けどとりあえずは姿勢制御と浮遊機関を最大出力に……とかおもってたけど、どうやらそれは間に合わなかったようだ。なぜなら蜘蛛は後二匹いたからだ。どうやら私はパスされたらしい。そして奴らは連携を見せた。一匹が私を伴って逃走し、もう一匹が追手を足止めするという普通の連携。けど蜘蛛は足止めが得意の様だ。そもそも蜘蛛の糸は対象を拘束するのに使うのが普通だしね。さっきまでの特殊な糸は結局何だったのかわからないままにキララに破壊させたから、目的がわからないままだけど今使ってのは普通の糸らしいのはわかる。


 このままじゃ、私達は分断される。流石に何もせずにつれていかれる訳にもいかないよね。


「まさかこんな早く使うとはね」


 私はそういって籠の中央に鎮座する。そして宣言するよ。


「アクティブ! バトルモード!!」
『マナを確認。バトルモードに移行します』


 機械的なそんな声が聞こえて一気に籠の中が狭くなる。それは全ての操作系統を手の届く範囲に持ってくるためだ。明るかった内部も一度暗くなって前周囲に外の光景を映すようになる。わずかに沈んだ体はおさまりが良い椅子に包まれて私の三百六十度はどことなくアンティカの内部に近いものにある。まああそこまで狭苦しくはないけどね。そして勿論内部だけではなく外も変わってる。足はないけど、腕が四本展開したのだ。まあ何があるかわからないからね。


 こういう準備だってちゃんとしてる。さて、ちょっとは自分でも頑張ってみようかな? 

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