美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ28

「さて、どうしましょうか?」


 困惑気味に艦長がそういってくる。こんなに指示を仰がれたらこいつが艦長でよかったのかちょっと不安になる。いや、普段はもっと自主的なんだよ。多分私が居るからだろう。まあ相手が相手で状況が状況だしね。でもこういう事態でも毅然とした対応をしてくれるのか艦長ってものだろう。


「そっちはどうしたらいいと思ってるのよ?」


 私ばっかり意見を言うと、直ぐにそれが承認されちゃうからね。それに実際私もどうしていいか迷ってる。けど、あの優雅に飛んでる姿はなんかイラつくから主砲でも撃ってやってもいいかなとは思ってる。そもそも向こうから仕掛けてきたし、背中を撃っても文句は言われないよね。


「彼らの目的が気になる所ですが……問答無用で襲って来ましたからね。次の行動を許す前に撃ち落とす方がいいかもしれません」
「そうね」


 おおむね私も同意見だ。とりあえずやられたらやり返すのが私なのだ。


「照準、前方の未確認船…………撃て!!」


 その号令によって左右に開かれた砲門から一斉にミサイルが発射される。その数はかなりの数だ。白い軌跡を描いてミサイルはマンタへと迫る。そして数秒の後に命中した。吹き上がる爆炎。そればかなり派手だけど、花火というには汚すぎる代物だ。


「ダメです。目標、いまだ健在!」


 オペレーターの子がそういう。映像では煙で見えないけど、レーダーには変わらぬ目標が映り続けてるんだろう。まあこれくらいで落ちるとも思ってなかったんだけどね。主砲ならあるいは……とおもうけど、艦長がそれを選択しなかったのにはきっと理由があるんだろうし、何も言わないでおこう。少しすると、煙は空に溶けて消えていく。そしてマンタの姿が見えた。その姿はさっきと寸分違わずにちがわない。つまりは全くの無傷という事だ。


 まあ確かに見た目ほどに威力がある訳じゃないんだけど……私だって傷一つつかないし、ある程度の種族には簡単に防がれる代物だ。あっちの世界の物と威力が落ちるのかと言われたらよくわからないけど、こっちには魔法があるからね。


「主砲、展開!」


 どうやら同じ攻撃ではだめと判断したようだ。まああの姿を見ればそうなるよね。アトランティスの前方が左右に開く。そしてそこから砲身が顔を出す。けどその時だ。なんとなく聞き覚えのあるような声が艦内に響いた。


『相変わらず、俺の事を邪魔する奴だ』


 聞こえる声は若い男の声。多分魔法でこちらまで声を届けてるのだろう。声を届けるのならその姿も見せればいいのに。不細工なのかな? 


『だが、貴様を滅するのはここではない。ここでは……な』


 その言葉と共にマンタの姿が空と同化してく。そしてすぐに完全に見えなくなった。


「目標、完全に見失いました!!」


 艦長が直ぐに主砲の中止を指示する。目標がないと、撃つ意味ないからね。それにしてもなんか、誰かに向かって滅するとか言ってたね。私か? 私じゃないよね? なんか聞いた事あるような声だった気もするけど、思い当たる節がない。消えたみたいだけど、転移とかじゃないよね? 透明になっただけにしてはマナも感じれないけど……とりあえず警戒を維持したまま、私は光が示す航路を進む。

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