美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ21

「行くわよ! 約束の地へ!!」


 そんな私の言葉で震えるような声がドックに響き渡る。皆やる気は十分だね。私達はさっそく最新鋭艦『アトランティス』へと乗り込む。振動と共に山が開かれる。そして機体に光がともり、僅かに地面から浮いた。


「マナ循環率100%、全ての術式の正常稼働を確認しました」


 私は操舵室の中でも一番いい椅子に座ってる。艦長は別にいる。けど、その人が座る椅子よりもいいのがあるのだ。艦長のなかなかに壮健なオジサンがこちらに視線をよこす。なので私は頷いておくよ。それを受けた艦長は立ち上がり、その声を響かせる。


「アトランティス、発進!!」


 その瞬間、わずかに体に圧がかかる。けど、それもほんの僅かな物だ。これも術式のおかげだ。この船、アトランティスには数々の新装備と技術が投入されてる。船での快適性もその一つ。どれだけ速く、そしてアクロバットに動いても、中の物がばらばらになったり、私達の三半規管が滅茶苦茶になったりはしない。そういう術式が組み込まれてるからだ。だからこのアトランティスでは地上に居る時と変わらないように動ける。一気にドックを抜けて大空へと舞い上がるアトランティス。


 そのスピードはこれまでの船とは一線を画すものだ。けど、そのスピードに、おびえる者なんていない。飛行が安定するまでもなく、こうやってお茶だって飲める。


「それではラーゼ様、光が示す先を目指します」
「うん、それでいいよ」


 アトランティスの操舵室の中央には台座があって、そこにはだごちゃんのコアが宙に浮いて鎮座してる。そしてそのだごちゃんのコアから一筋の光が出てる。これが示す先が約束の地だ。私とメルでこの機能を引き出したよ。どうやらあそこの機械達には帰還機能があるみたい。だからそれを利用してるのだ。なんとか記憶の補完をしたメルと共に、だごちゃんのコアから受け取ってた術式を解析してね。これで迷わず約束の地へと辿りつける筈だ。


 数時間も経つと、技術者たちのアトランティスの初飛行の興奮も収まって大分静かになった。私はとりあえずずっと操舵室にいるのもなんだから自室に戻ってきてた。今、アトランティスは雲の上を飛んでる。下は雲海。この世界でこんな光景を見られる存在がどれだけいるだろうか? 人種では普通にしてたんじゃ絶対に無理な光景だね。そう思って眺めてると、何やら扉の向こうで話し声が聞こえる。これは……キララと亜子かな? 何やら、言い合ってるような? 


 前はそんな仲悪くなかったでしょうに、最近ちょっと険悪なんだよね。二人とも独自に動いてるから、何回かぶつかった事があるような報告を蛇から聞いた事がある。そのせいかも。けど、そんな喧嘩は他所でやってほしい。まあでも、考えようだよね。私はとりあえずかき混ぜてどんな事になるかワクワクしながら、扉を開けて二人を出迎えてあげるよ。

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