美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ20

 ドックに沢山の人が集まってる。まあ集まってるというか集めたんだけどね。私の鶴の一声でね。アナハイムに連なる三つの大都市にはそれぞれ隠しドックがあって、そこには移動用の転送陣が完備されてるから、準備はその三大都市を隔ててしたよ。それぞれ三つの都市には特徴づけがされてるし、得意な分野とかがあるからね。今回は領を挙げての大ごとだし、引いては人種全体にかかわりがあることだ。アイドルをやりたいっていう私の我儘とは訳が違うから、蛇とかも協力してくれた。


 流石に直ぐに決めて直ぐに出発……なんてできなくて、一月くらいかかったけどね。ここら辺はしょうがないね。私の肩にもいろんな物が乗っかってるから、私的にはそんな物関係なく動きたい所だけど、周りがそんな事を許さない。だから色々な準備を整えてくれた訳だ。色々なスタッフも含めて百人くらいはいるかな? その中には勿論亜子やキララもいる。キララは一応学生だし、いつだってその気になれば連れまわせる。けど亜子は軍属だからね。


 しかも王家お抱えの精鋭部隊で人類の要。亜子を引っ張ってくるのが一番苦労したっぽい。何やら色々と条件飲まされたとか言ってたけど……まあなんとかなるよね。その気になれば王様を懐柔すればいいだけだ。私が膝に座って上目遣いでお願いすれば大抵「うんうん、よしよし」と言ってくれるからねあの王様。楽勝である。でもそれをわかってる側近たちがなかなか合わせてくれないんだけどね。きっと今回、亜子を連れてくのに条件を付けたのもそいつらだろう。


 別に人種に不利になるような事はしないのにね。私がここに腰を据えてる限りは。だって誰もいなくなったりしたら面白くないからね。物語とかに登場してくる世界支配したい奴って自分一人になってその後どうするんだろうって思うよね。まあとりあえず色々と条件はつけられたけど亜子は確保できた。約束だったし、ちょっとくらいは無理してでも連れてってあげるよ。てか亜子はアンティカあるから、一人で突っ走られても困るからね。そうそうそのアンティカも船にある。


 何が起こるかわからないし、あった方がいいでしょう。それにゼロは亜子にしか動かせないし、残しといても意味はないから普通に了承してもらえた。そういえば今回はカタヤとかはいない。流石に防衛の要を全員連れてくなんて事は出来ないよね。アンティカが全機戦線から離れたらそれこそこの国終わるし。なんかカタヤはとても不満がってた見たいだけど、私はあいつらはどうでもいいから無理して連れてく気も最初からなかった。亜子さえいればいいのだ。


「キララ様、アレがファイラルの最新鋭の船……ですか」


 そう言ってるのはキララの取り巻きの一人。あいつ一人で取り巻き二十人くらいつれて来てるんですけど? 遠足気分なのかな? まあ流石に全員は連れてかないけどね。でもそれをやるとついていける奴といけない奴で確執が生まれて、女のドロドロとした戦いが始まりそうではある。よし、どんどんやっちゃえだよ。まあアナハとティアラはいいよ。あの二人はついてくるだろうなって思ってたし。アナハの魔眼は有能だし、ティアラは可愛い。まあ可愛いというか美しいよりだけど。


 私を除くと五指には入るんじゃないかなって美しさだからティアラには甘くなっちゃうよね。私可愛くて綺麗な女の子は大好きだから。


「ついに……ついに約束の地へ……心躍るわい」


 そういうのはネジマキ博士。この人も歳なんだから部下でも送ればいいのに、自分で行くと聞かなかった。まあ文句はないけどね。直接見て肌で感じたいんだろう。そういうの大切なのは私もなんとなくわかるしね。今回は結構博士のような研究者たちも沢山いる。うちの領にいる研究者たちはアグレッシブだね。危険よりも好奇心……頼もしい限りである。そして領軍から選ばれた精鋭達。更には王都軍も三個小隊くらいいる。なんか王都的には一領だけに任せる事は出来なかったようだね。


 彼等は何だか私達とは距離を置いて観察してる感じがある。絶対になにか良からぬ命令を受けてる気がする。まあとりあえず注意だけはしとくようにグルダフには言ってあるし、カメレオンの部隊の奴が監視してるから大丈夫でしょう。


 私はドレスをたなびかせて皆から一つ高い壇上へとあがる。薄暗いドックにスポットライトが光って私を照らすよ。さっきまでの喧騒はかき消えて、皆が私を見つめて溜息をつく。ごめんね可愛すぎて。万悦感に浸りながら私は声を出す。その声はドックの広い空間に反響して響いた。

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