美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ18

 だごちゃんは私の初めての友達……あの天空にある約束の地で私を助けてくれた存在だ。最初は敵だったけど、私達は死闘の果てに友情が芽生えた――とかいうのは嘘だけど、だごちゃんには助けられた。だごちゃんは約束の地で作られた存在だ。そしてだごちゃんの形見代わりに持ってきただごちゃんのコアは約束の地の物。きっとあそこの技術で作られた筈。というか、私が最初に色々と吸収したのって多分だごちゃんのコアにあったものだ。それなら私の中には実は行くための情報とかなんやらがある――のかもしれない。


 でもそれを意図的に引き出せるかって言ったらなかなかに大変なのだ。私の中には沢山の力というか、得たものがある。私はどうやら色々と取り込めるみたいだからね。でもそもそも……だ。これって私に最初からあった力なのだろうか? 私は容姿にしかパラメーターを振らなかった。ならこんな力があるのはおかしい。ゼルの力は、たまたま授かったに過ぎないし、これもゼルの力の一部? とか最初は思ってた訳だけど、ゼルは単体で最強だしこんな力が必要か疑問だよね。


 ならこれは実はだごちゃんのコアから得た力だったんじゃないだろうか? 私はわからないことはあんまり考えない。考えなくてもうまく回ってれば問題ないし、問題があればその時に考えればいい事だって思ってる。そもそも考えるのは私の役目じゃないし。けどなんか今、だごちゃんのコアを再び握ってそう思った。まあそれならそもそもなんでだごちゃんのコアから沢山の情報を得られたのかが謎だけどね。実はアレはだごちゃん自身が行った事? それともそういう仕掛けを行ってた? 


 誰が……なんてのは明白だ。あの地……約束の地はあそこで眠ってた奴らの場所。そしてきっとあそこを跋扈してた機械たちも彼等に作られた存在。なら、あんな事ができるのか彼等しかいない。


「なんかこのまま、あの地に行くのは不味そうな気がしたかも」
「どうしてですか母よ?」


 なんかだごちゃんのコアがあれば行けそうな気がしたんだよ。それは今までの感覚からなんとかなりそうってちゃんと思えることだ。けど、同時にヤバい気もしてきたっていうか? 第三者の意思が介入してるってわかるとさ、不安になるじゃん。それだよ。だってあそこで見た約束の地の住人たちって多分死んでなかったよね? コールドスリープみたいな感じだったと記憶してる。つまりは目覚めの時を待ってるんじゃないかな? その引き金を私は引こうとしてる気がしてならない。


「やめるといっても亜子は引かないでしょう」
「確かに……安易に連絡するんじゃなかったかも。いや、今回もダメだった……ってことに……」
「それで大丈夫なのですか?」
「うーん、大丈夫じゃないかも……」


 だって実際既にこの世界は大戦の火蓋が切られてるって言っていい。ただ、まだ私達が住む場所がそれほど激しくないだけの事だ。クリスタルウッドによって世界中の事をマナを通して感じ取れる私にはわかる。空にある星のマナはこの大地を蝕んでる。それはつまり、元居た種がその土地からいなくなって奴らが跋扈してるってことだろう。そう遠くないうちにここもどうなるかわからない。けど戦いは私が望んでなくてもやってくるのは確実だ。その時、ここを守れるのか……正直今のままじゃ厳しいよね。


 だからこそ今、なんだ。多分もう今しかチャンスはない。戦いが激しくなれば約束の地どころじゃないし、亜子だって人類の英雄としてここから離れるなんてできなくなるだろう。だから今……


「やっぱり、行かないって選択肢はなさそう」
「そうですね」


 結局は行くしかない。そう結論付けた。そして私はだごちゃんのコアを見つめる。


「メル」
「はい」


 私はだごちゃんのコアを掲げるそれにメルがその大きな手から人差し指を伸ばして触れる。何かが吸い上げられるように光が鳴動してる。そして同時に何かが私の中にも染みてきた。

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