美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ17

「メル、どう?」
「母よ、いきなりの命令ではそう簡単にやれませんよ」


 大きなメルの腕に抱かれながら私はメルに尋ねるよ。クリスタルウッドの麓には今は私とメルしかいない。今は私が使うからって一般人のクリスタルウッドへの接近はご遠慮してもらった。反対とか出るかと思ったけど、別にそんな事は全くなかった。


 私絶対君主みたいなものだしね。そもそもこんな超絶美少女のお願いを聞かない奴なんてそれこそ目が腐ってでもない限りないよね。けど状況はそこまで芳しくないんだよね。メルとクリスタルウッドを使って約束の地を見つけようとしてるんだけど……あんまりうまくいかない。


「やはりこの前と同じの様です」
「この前って程、最近でもないけどね」


 マナ生命体であるメルには時間の感覚というものが乏しい。だから数年前の事もメルにとってはこの前になるみたい。あの時も結局見つけ切らなかったんだよね。けどあの時は後でいっか……とか思って亜子をなだめてそれからなあなあしてるからな。そのせいで亜子の私に対する信頼とかちょっと落ちたみたいだし、今回は簡単には諦めないよ。そもそも前回とは違って今は色々と充実してるしね。約束の地へと行く道具、行った後の為の道具と色々と準備はちゃんとしてたのだ。


 ただ見つける事ができなかっただけでね。そもそもマナ生命体なら、マナが濃い場所ならそこに発生出来る筈なんだけど……私の記憶ではあの場所はなかなかにマナが濃かった気がする。けど流石にマナ生命体が発生出来るほどではないのかもだけど。それか……ゼルが邪魔してるか? 別にゼルには私の邪魔しようとかそういう気はなさそうだけど、あいつっているだけで周囲に影響与えそうじゃん。多分そんな存在だと思うんだよね。けどだからこそ、こっちだってゼルとは魂の回廊で繋がってる訳で、どうにか出来るかと思ったんだけど……


「メルにも何も見えない?」
「残念ながら」


 接触して貰って、メルにはかなり私と同化して貰ってる。それで魂の回廊を活用してゼルの居場所――もとい約束の地を見つけようとしたんだけど、これもダメみたいだ。世界に満ちたマナの情報はここクリスタルウッドに集まる。以前よりはそれの選別とかも上手くなったと思ったんだけど、一向に約束の地は見つからない。天上人とかいうのは、ほんと上手くあの場所を隠してるみたい。けど最初に会った時、ゼルはどこかから飛んで来たよね? って事はゼルには約束の地に帰る術があるのかな? 


 帰省本能とか? それだとどうしようもないけどさ……なにかもっとべつの何かかあるのなら……


「あの場所の何かがあれば、私も過去の自分の記憶を引っ張りだせるかもですが……」


 今のメルは第二のメルとか、そういうのみたいな感じらしいからね。マナと共に消え、マナと共に生まれるのがマナ生命体。覚えてる事もあるっぽいけど、完全に以前の自分を定着は出来ないらしい。だから今のメルはずうっと昔に存在してたメルとは厳密にはちょっと違うらしい。


「あの場所のなにか……ね。そうだ!!」


 私はピコンとひらめいた。ある! あるんだよ! あの場所……約束の地から持ってきた物が! 前の時はライザップに置いたままだった物をグルダフが帰省ついでに持って帰ってきたんだ。私はそれを持ってくるようにカメレオンに指示する。


「だごちゃん、いつか再生させてあげたいな」


 私は感謝を込めてそう呟いた。



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