美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ14

『貴様が何を望もうが、世界はお前を無視しない。役目は既にお前に託されたのだ。精々苦しむがいい』


 シャグリラン達の高笑いが部屋にこだまする。そして次第に遠くなっていく声。どうやら限界が来たみたい。流石に選別したマナを強制的に呼び出すのは無理があったみたい。そもそも普通は選別して呼び出すとかできないんだけどね。なんかあいつらのマナはわかりやすかったんだ。まあその理由も教えてもらったけど……結局あいつら面倒事だけ押し付けていったな。役目何て物をする気はさらさらないけどさ……あいつらの話では最終的に敵はクリスタルウッドに来るのは確定してる。


 ただその土地の生物を掌握するだけが征服じゃない。本当の意味での征服は世界樹の、クリスタルウッドの掌握というか、吸収みたいな事らしいからね。ってなると、否がおうにもここは戦場と化すよね。魔王とかの問題もあるのに……さらに頭の上に居る奴らまで……面倒くさい事この上ない。私はこのままの地位で好き勝手やってたいだけなのにな。別段世界が欲しいとか思ってる訳じゃないし。そこら辺の戦いなんか勝手にやっててよ――って感じ。
 なのになぜに私を巻き込むように状況は動くのか。私が何したっていうのよ。全ては偶然なのに……


「ラーゼ様……」
「ん、もっと後でもいいかもとか思ってたけど……その時世界がどうなってるのかわかんないしね。しょうがない。予定を早めようか。連絡は任せるよ」


 私は姿が見えないそいつに向かってそういうよ。カメレオンはいつだって私の傍にいる。まあ今はぬいぐるみ達がいるし、地位もある。そこまで私を守る必要性もないけどね。けどカメレオンは私の傍にいるのが至上命題みたいに思ってるからね。離れようとしない。まあこいつが居るっていう安心感を私も感じてるからいいんだけどね。普段は全く意識しないし。そうそう話しかけるなんて事しないし、日がな一日マジで存在忘れる事もある。まあこの前のライブの時はいなかったんだけど。


 蛇に仕事押し付けられてたからね。こいつ自体がそこまで強いって訳でもないんだけどね。勿論人種よりかは強いけど、他の種族と正面切って戦えるかというとね。けどカメレオンの武器はこの隠密性だ。暗殺には最高だよ。貴族を脅すのによく使った。私を自分の物にしようとする不届きな奴らがいなかったわけないからね。まあ、わかるけどね。私の程の美貌だもん。多少の権力を持ってる奴らなら手に入れてみたいと思うだろう。


 けど私は商品棚に並べられてる宝石ではない。お得意様にだけ教えられる逸品でもない。私の価値はそんな所にとどまってなんかないんだからね。だからそういう不届き者にはカメレオンたちの部隊がこっそりと、脅しとかかけたのだ。その手段は様々であんまり詳しく聞いてないけど、こいつらが出張るとあほな貴族からの招待とかは来なくなったから何かがあったんでしょう。そこら辺に私は興味ない。


「御意」


 カメレオンの声も気配もそれっきり消えた。まあけどそこにいるだろうけど。カメレオンたちも強くなってない訳じゃないからね。グルダフとかはわかりやすく強くなってるけどさ、方向性か違うっていうかね。こいつの強みはその情報を伝えるネットワークだ。カメレオンネットワークをこいつは構築してる。こいつ等の部隊は一つの目であり耳。グルダフが個人の強さを高めてるのなら、こいつは集団の強さを高めてるって感じだね。個人ではどうしても限界があると感じたんだろう。


 こいつらの元の力と、私の力、そして人種の研究と色々な種の知恵が混じってここでは技術が発展してるから、色々な可能性があった。それらを皆、自分に合うように構築してる。カメレオンはネットワークを使って情報を伝えてるだろう。それはほどなくして必要な奴らを集わせる。けど懸念もある。


「亜子は大丈夫かな?」


 あの子にとって一番関係深い……のかはわからないが、これにあの子を外すわけにはいかない。だってこの時をずっと待ってただろうから。けどあの子人類の希望の一人だからね。忙しいんだ。まあでもそこは残りの二人に押し付ければいいか。私は楽天的にそう思った。



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