美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ7

「ようこそラーゼ様、ネロは失礼なかったですかな?」


 自分で来ないと思ったら、どうやらネロの学習実験でもしてるみたい。まあ実際忙しそうなのは見てわかるんだけどね。だって今も何やら組み立ててる。それに床にはよくわからない紙がいっぱい散乱してるし、顔色もなんか悪い。


「別に、ネロには期待できると思うわよ。それよりも大丈夫な訳?」
「なに、巨大な敵に合わせてのアンティカの新装備を考えとる所ですじゃ。楽しいんで心配無用ですぞ」


 にやりとニヒルに笑うネジマキ博士。確かにこういう時が研究者は一番は楽しいのかもしれない。だって新しい可能性に挑戦してるみたいなものだしね。その分重圧だってあるだろうけど……だってアンティカがこの国の要だからね。装備を更新するのはこの国の為に必須だ。だから普段はケチな王宮の連中もアンティカの予算は渋らない。ネジマキ博士はこっちに来たし、研究施設も王都からファイラルに移ったけど、実は予算は王宮から出てる。まあそれは王の威厳の為にも意地なんだと思うけどね。


 だってなんでもファイラルで完結してしまったら、王に権威なんてないと言ってるようなものだ。それを避けるためにも、アンティカに対する予算は頑なに王宮が出してる。アンティカが最後で最大の矛と盾だから、民衆にその力を持ってるのが王だと示したいんだろう。


「マスター、キュウケイハタイセツデス」
「うむむ、お前もなかなかに口うるさくなってきおったな」


 どうやらネジマキ博士の事はネロがきちんと管理してくれてるらしい。ネジマキ博士の娘さんも最初は一緒に居たんだけどね。あの人は別の研究施設へと移った。ファイラルには大きな都市が三つあるから、それぞれで研究方針にも特色つけようかと思ってね。そしてやっぱりそういう時、上に立てる優秀な人材が必要になるじゃん。そうなると自然と……ね。まえからこの偏屈な老人な下にいた人たちが優秀な訳だよ。だからそういう事である。自由に羽を伸ばせるとか喜んでたけど、実際は寂しかったのかな? 


 ネロがお世話焼くようにしてたってことはさ。だってネロは機械だし、最初からこんな事は言わないハズ。まあそこには突っ込まないけどね。ちゃんと体調管理してくれるのなら、願ってもない事だしね。今、この人を失うわけにはいかないんだから。


「ネロがいれば、博士は大丈夫そうね。頼んだわよ」
「オマカセアレ」


 そう言って胸をたたくネロ。ガキンという音が響いた。


「まったくラーゼ様は儂をこき使いたいのか労いたいのかどっちなのじゃ?」
「うーんどっちも? 私使える物は使うからね」
「ほんと、恐ろしい方じゃよ」


 そういうネジマキ博士は一息つくためか、ごちゃごちゃしてる机の傍の椅子に腰かけてコーヒーをすすった。そして問いかけて来る。


「それで何用ですかな? 何か依頼する為に来られたのではないかのう?」
「勿論、ちょっと面白い動きを感じてね。『外』に出れる装備が欲しい。私はいらないんだけど、私は行かないからね」
「外へ……ですか」
「そう」


 外というのはこの国の外だ。そして私が満たしてるこの世界のマナの範囲の外。あの三つの星のせいで、クリスタルウッドでの循環は効果が薄くなってるからね。生身で外側に行くと大幅に身体能力が落ちる。それに魔法の威力とか、効果とかもだ。だからそれを防ぐ為の装備が必要なのだ。


「ロボット達ではだめなのですかな?」
「アレは戦闘用でしょ? 私は調査したいのよ」


 マナの動きは私しか感じれない。寧ろ世界全体のマナの動きとなればなおさらだ。いろいろと状況が交差してる今の状況、受け身で居たらこんな弱小種族なんて直ぐに滅びるよ。だからやれることはやっとこうかなってね。そういう事だ。


「了解しました。やってみましょう」
「うん、後で美味しい物でも届けさせるよ」


 それで英気を養ってねって事だ。とりあえずここでの要はすんだからお暇する。さて次は……私は次の目的地に向けて歩き出した。



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