美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ159

「「ラーゼ様!!」」


 二人が私へと飛んでくる。私は二人とそんなに大きさ変わらないんだから二人を受け止めるなんて出来ない。だから二人の勢いに押されて床に一緒に倒れた。はっきり言ってかなり背中が痛い。怒りたい所だけど……


「ラーゼ様っひくっラージェさぁまぁああ」
「ただいまです。信じてたです!」


 こんな二人を怒るなんて出来ないよ。ちなみに大泣きしてるのがシシである。コランの方も泣いてるけど、大泣きしてるのはシシだ。これじゃあどっちがお姉ちゃんかわかんないね。けど、きっと一生懸命頑張ったから、緊張が解けたんだろう。実はフィリーもミラも泣いたしね。二人には言わないでほしいって釘刺されてるけどさ。私は皆の保護者だから、包容力いっぱいに受け止めてあげよう。だから二人を優しくナデナデする。二人が気が済むまでしばらくこうしてあげよう。


 そしてたっぷり五分くらいはそうしてた。ようやく泣き止んだシシは周りを見て顔真っ赤にしてそっぽ向いた。まあ皆に大泣きしたのみられちゃね。


「それで……二人が持ってたそれって……」


 私は二人がここに戻ってきた時に持ってたマイクに視線を向ける。今は犬達に箱に入れてもらった。適当なのがなかったから、そこらの木の箱に布詰めて転ばせてある。


「わかりません。いつの間にか持ってて……」
「あの場所で会った大きい鎧の人……なのかな?」


 話を聞いたら、シシとコランはやっぱりあの刺さった剣の試練の中にいて、そこで黒鎧のアスタナと戦ってたらしい。まあ戦うといっても二人に戦闘能力なんてない訳で、ほんとよくかえって来れたと思う。けどそもそもなんで誤作動何て……おもってたけど、そこを突っ込んだら私に帰ってきそうなんでやめた。なんか話を聞いた限り純なマナに反応してたらしいし、この世界で純なままにマナを使えるのはクリスタルウッドと繋がってる私くらい。うん、なんか原因が私のせいとかになりそうだから突っ込まないよ。


「そうか、それが新たなる始祖様の姿なのじゃな」


 そんなしわがれた声がこの場に響く。その瞬間、ここに居たアスタナ達が平伏する。どうやら上の奴らしいね。私が暴れても出てこなかったのに今更何? やっばりこの試練をシシ達がクリアしちゃったのが原因だろうか? そうだろうね。だってシシもコランもアスタナじゃない。それなのにクリアしたとか……これはアスタナの為の試練じゃなかったのかって話だよね。


「なにか用かしら?」


 とりあえず胸張ってそういってみた。こいつらの言葉でもしかしたらまたアスタナが反旗を翻す可能性も無きにしも非ずだしね。


「ご安心をマナの巫女殿。ただ、我らは確かめに来ただけですじゃよ」
「確かめに……ね」


 うん、何を言ってるのかさっぱりだ。けど、そんな空気は出さないよ。なんて私ってマナの巫女らしいからね。なんか肩書が増えてくな……


「お見せして頂いても?」


 その言葉に犬一が戸惑った忠犬の目を向ける。ふむ……どうしたものか。じっさいアレが何なのかわかってない。マイクに見えるけど……マイクとして使っていい物なのか? だってアスタナは武器だ。アスタナは種としてその体を武器へと変える事ができる。それ以外はない……らしい。なら、このマイクに見える物も武器なのかもしれない。それに同じアスタナに触れさせるってのもなんか危なくない? だってマイクになってるとはいえ、これは元は最強のアスタナそのものの筈だ。


 その力を取り込む方法とかあったら? 


「大丈夫ですじゃよ。始祖様の力は受け継ぎし者しか使えませぬ。ただ、その身に触れたいという、老いぼれの夢ですじゃ」


 そう言われるとね。ほら、私って基本優しいし。警戒はしつつ、取り合えず頷いて彼等に触れさせてやる。すると感動に打ち震えながら、なんか感触とかフォルムが素晴らしいとかマニアックな事言い出した。うん、やっぱりアスタナだねこいつ等。



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