美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ146

「「ああアあああああああああぁぁぁあああああ!!」」


 大空を私とフィリーは落ちて行ってる。あの後……コランとシシと分かれて私達は厳重に周りを固められてた。同じ失態をしない様にと、それは当然の行いだろう。けど私達は諦めてなんかなかった。コランとシシの事は気になる。奴らは建物を囲んで、今かとカギを待ってる。どうやらあそこは相当重要な施設らしい。あそこに何があるかなんて実際わからない。上手い事転送陣があればいいが……だがもうわたしたちはどうすることも出来ない。
 だから私達は私達の為に出来る事をやるしかない。私達はコランたちの立てこもってる建物と、元からいた建物とをつなぐ渡り廊下にいる。周りはさっきも言った通り、敵で囲まれてる。けどこのままじゃ私達だけが足手まといになってしまう。それは私も……フィリーもきっとゆるせないだろう。だから私達はまだあきらめてなんかない。その証拠に私達は固く手を握りあってる。普段なら絶対にしないことだ。別に仲がよくないとかじゃないが、私もフィリーも気恥ずかしいってのがある。


 なんの気兼ねもなくこんな事ができるのはシシくらいまでが限界だろう。けど今、私達は固く手を握り合ってる。周りの奴らは不安でそうしてるんだろうと思ってるだろう。手を握り合うことで安心を得てる……とかさ。実際それも間違ってはない。けど、フィリーは実際痛いくらい握ってるから。こいつらへの憎しみを私にぶつけないでほしい。そう思ってると、急いで戻ってきた奴が扉の前にいた奴にカギを渡した。それによって扉が淡く光ってガチャリと大げさな音がした。


「「おお」」


 そんな声が奴らから漏れる。まさか誰もあそこには入ったことなかったのかな? わからないけど……ここしかない! やつらの意識は完全に扉の方へと向いてる。まだシシ達があの場にいるかどうかなんてわからない。けどここで私達が事を起こせば、こちらにも人数を裂かざるえないだろう。私はいつも持ってるカードを発動させた。それは私達の曲が頭に響くカード。いつでもどこでも私達が曲を覚えたりできる様にってラーゼ様がくれた物だ。


 これは普通は対象の一人だけなんだけど、その出力を紋章のマナでムリヤリ増幅させてここらにいる奴ら全員の頭に流す。本当なら受け取った魔法を使いたい所だけど、捕まった時に、腕輪みたいなのをつけられて魔法が発動しないんだ。けど、紋章の力は感じる。だから多分、魔法発動まで魔力を集められてないのか、拡散でもするようになってるのか……わからないから、純粋にマナを込めるくらいしかできないんだ。


 私達の曲が流れて頭を押さえつけてる奴ら。そりゃあね。だって音も特大。耳にはなにも響かないけど、頭を直接殴られてるような強烈さだ。流石にここまでとは思わなかった。けど……自重なんかできない。つないだ手が強く握られる。視線を向けると、フィリーがまっすぐに私を見てた。私達は一番手前の奴を突き飛ばして、開いた包囲網から逃げだす。そして渡り廊下から二人して一斉に飛び出したんだ。



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