美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ137

「つっ!?」


 網膜に強烈に刺さってくる光。それは紛れもなく太陽の光。大空にあるとはわかってたけど、まさかいきなり外に出るなんて……強風が私達に腰をつかせる。渡り廊下の様になってるここの先に更に建物が見える。しかもそこは何やら紋章が描かれた旗が大量に靡いてた。なんとなくだけど、重要そうな施設な様な気がする。何故か左右に手すりもない通路は、強風に流されたら真っ逆さま……怖い……けど、ここでへたりこんでる訳にはいかない。


「いこう!」


 私は震える膝を鼓舞して立ち上がる。そして皆を引く。手を繋いでれば大丈夫。誰かが飛ばされそうになっても誰かが踏ん張ればいいんだ。なんとか私達が先の建物に辿り着いた時、追ってきた奴らが向こうの扉から現れる。これはこの建物に入っても追いつめられるだけではなかろうか? もしもここに転送陣がなかったら……そうなるよね。けど迷ってる暇もない。私は再び勢いよく扉を開け……開け――


「開かない!?」
「そんな!」


 ミラが変わってガチャガチャと激しくドアを揺さぶる。そういえばこのドア……いままでの質素な奴と違ってる。なんか重厚だし……扉には魔法陣みたいなものが刻まれてる。ミラが握ってるドアノブ……そこに力を入れる度に、一瞬だけど、続いてる線が光ってるみたい。けどそれは陣まで届いてない。


「この扉……魔法で開くタイプじゃないかな?」
「魔法というか~マナみたいな?」


 フィリー姉さまが私の言葉に継ぎ足してそういうよ。確かに魔法というよりもマナなのかもしれない。そもそも私達だけじゃ魔法何て使えないし、今のミラは別に魔法を使ってるわけじゃない。それなのに反応してるって事は確かにマナに反応してるのかもしれない。


「ど、どうするの?」
「くっ、私があいつらの相手をするから、フィリー達はここを開ける術を考えてくれ!」


 コランの不安気な言葉にミラが扉から離れて通路の方を向く。ガシャガシャと音を立ててこちらに来てた奴らは二十人はいる。ちょっと女の子四人に過剰戦力ではなかろうか? 


「諦めたまえ。わかっただろう、君たちに逃げ場はない」


 そう言ってきたのは髭を蓄えた渋い人だ。浅黒い肌には傷がいくつも見える。てか大半の奴が、下半身はしっかりとした鎧なのに、上半身はすごく防御力薄そうなんだろうか? シャツ一枚……しかもかならず二の腕まで出してる。流石にこんな空の上だとそれなりに寒いんだけど……なにか理由があるんだろうか? いやいや、そんな場合じゃない。なんとかこの扉をどうにかしないと。


「君たちに危害を加える気はない」
「そんな事――」


 厳しい声でミラが反論しようとしたのをフィリー姉さまが遮る。いつの間にか、彼女はミラよりも前に出てる。しかもその背筋はとてもまっすぐに伸びてる。怯えなんてみえない。そんなフィリー姉さまがこっちにアイコンタクトを送ってくる。


(え? 何? まさかこっちは任せるって事?)


 私だけでどうしろっていうのよ!? 私は頭を抱えたい気持ちでいっぱいだった。



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