美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ135

 下層の方に降りると、直ぐに変な匂いと熱気が漂ってきた。女子としてはなんか嫌な匂いだ。どこかからか甲高い音も聞こえてる。螺旋階段が終わった所はそれなりの空間の吹き抜けだった。ここから四方に通路が続いてる。多分上に行くにはこの螺旋階段を使うしかないんだろう。これってここで待ち伏せされたら、どうしようもないよね? なんでここに見張りを残しておかないのか……敵は結構アホなのかもしれない。せめて中央の部分に一人は残しておくべきだったでしょ。


 ここがこうなってるって事は、多分上層も同じように、移動手段はこの螺旋階段だけなんじゃないだろうか? いや、もしかしたら同じような場所がいくつかあったり? どうなんだろう……そこまで広そうではないんだけどね。いま見た程度の人数なら三十人程度だ。それが全てかはわからないけど、ここがこの種の拠点なのだとしたら、多く見積もっても百人くらいは居る可能性はあるよね。その程度なら、この建物だけでおさまりそうな気もしないでもない。
 まあここにいるのが全部かどうかなんてわかんないけど。そもそもここが拠点ってのも想像でしかない。けど、案外間違ってないんじゃないかとは思う。だって下……に降りるまでに真ん中のエリア、中層を逃げ回ってたら、やっばり生活感があった。下層の方はなんかそういう感じがあんまりなさそうだけど……


「あて!?」


 先頭をいく私が何かに躓いた。カンカンカンと何かが連鎖的にぶつかってく。足元をよく見ると、そこら中に剣やら槍やらが散らばってた。


「なにこれ?」
「ガラクタって訳でもなさそうだが……」


 確かにどれも錆びついてるとかはない。埃かぶってるのもあるけど、けどどれも綺麗な物ばかり。どういうことなんだろう? 所々に武器が飾られてたりしたけど……これは出来損ないってことだろうか? 


「誰だ?」


 さっきの物音のせいだろうか、通路の奥からそんな声が聞こえる。まずい……私たちは空間の隅っこの方の薄暗い所へ身をひそめる。幸い、下層は中層程に明るくない。薄暗い所で気配消しを使えばそうそう見つかる事はないはずだ。案の定声の主は私達を見つける事は出来ずに再び通路の奥へと戻っていった。あいつは私達の捜索をしてない? とりあえずあいつの居ない通路を行くことに。流石に気配消しでも武器同士がぶつかって出す音まではどうにもできない。だから進むのが結構大変だ。


 だって本当に床一面に武器が散乱してる。とりあえずいくつか通路を進んだけど、どれも途中で行き止まりだった。その途中にいくつか部屋があったけど、どこからもカーンカーンという音が聞こえてたから多分誰かいる。中を確かめるなんてそんな事は出来なかった。再び螺旋階段の所に戻ってくると、ちょうど上からいくつもの足音が聞こえてきた。


「不味い!」


 流石にいくら薄暗くてもじっくりと見られたらバレそうだし、何人もいると、誰かは気づくかもしれない。けど既に通路はあと一つ。しかもそこには敵がいるの確定してる。けど一人か複数か……なら、一人しかないよね。


「私の出番か……」


 そういうのはミラだ。確かに攻撃系の魔法はミラしかない。けど、効くかはわからないし、やっぱり戦闘は最終手段。どうにか上手くやる方法があるはずだ。私達は降りてくる奴らに見つかる前に最後の通路に駆けた。



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