美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ124

「まさかこんな者たちまで……いるとはな」
「知らなかった?」


 私の配下にこいつらがいるってその筋には有名だと思うけど。そもそもクリスタルウッドの事が世界的に広まってるからね。よく知らない種族とかもクリスタルウッドの復活を知ってたりした。なので同時にマナ生命体の存在もわかってる奴らはわかってるみたい。寧ろマナ生命体をよくわかってないのは人種くらいみたいな? だからこいつだって知ってると思ってたけど……


「存在はわかってはいた……だが――」


 ここに存在してしまうとは思わなかったという事だろう。実際マナ生命体であるメル達はどこでも存在出来る訳じゃない。彼らはマナがある限り生き続けるから、兵隊としては最強のゾンビ軍団になれるんだけどね。けど、普通程度のマナ濃度だと存在出来ないから、守り位にしか使えない。だから実際外で見せた事はない。寧ろファイラル領から出したのが初めてだね。けど逆に言えばマナが濃い所なら彼らは存在できる。
 マナ生命体はこの世界の生き物と一線をはくしてる。彼らはマナが濃い場所に現れるのであって移動してる訳じゃない。だからどれだけ離れてたって距離何てのは彼等には関係ないという事だ。メルも彼等も彼等の感覚的には移動をしたわけじゃない。
 たたそこに、現れただけだ。この目の前の敵はかなりの使い手だから、多分普通に超速く動いて現れたとしてもあんな風に捕まらなかったかもしれない。多分奴にはそのくらい能力はある。買いかぶってる訳じゃないよ。体感してみてからの素直な感想だ。


 だって絶対に一対一での対面勝負とか勝てないよ。下手すれば蛇だって負けるかもしれない。まあ今は私の力で底上げしてるから大丈夫だとは思うけど……獣人としての力だけでは多分負けてる。


「あれだけのマナを持ち……そしてマナ生命体までも……操る。貴様は……一体何者だ?」
「ならあんたも教えなさいよ。あんたは何者?」


 だって私だってこいつの事をしらない。更に言うなら今の状況は私が有利。ここで私がペラペラと喋るメリットなんかないよね。こいつ自分の立場わかってる? 既に私は自身の体を再生させてるけど、こいつは崩壊が進んでるんだよ。みっともなく命乞いでもするんなら、少しは延命させてもいいんだけど……それは期待薄のようだ。他のマナ生命体たちは負傷者達の治療にあたってるからなんとかなるでしょう。クリスタルウッド還りそうになってたマナも私がそれを防いでたからね。


 クリスタルウッドの中に入られると、混ざり合うからね。その中から一つの人格……だったものを取り出すことは難しい。けど、入る前に阻んでしまえば、その者は世界に還る事はない。けどだからってこんな事、そうそう出来る事でもないけどね。だって体から離れたその人特有のマナは、段々と薄くなる。それは消えてる訳じゃなく、比率が大きい大気のマナに染まってるからだ。体から出たままだと、そのうちなんの変哲もない大気のマナと化す。それは世界に還ったと同義だ。


 だから長時間こんな事は出来ないけど、短時間で体を治して出て行ってたマナを肉体に戻せれば……かならず助かるはずだ。冒険者達は実際そこまでしなくてもいいんだけど、犬達のついでだ。そんな細かいコントロールまだ出来ないし、私の力の影響が届く範囲にいる間は助けてあげる。


「我は……」
「親父……あんたって奴――ってラーゼ!?」


 一番深い傷を負ってたであろうサイオスの奴が最初に起きてそんな事を言って私を見て驚愕してる。いやいや、今親父っていった? 


「貴様などは息子などでは……ない」
「ラーゼ……本物? いや、俺がその顔を見間違えるわけないよな!」
「ちょっと親父ッてどういう事よ?」
「あのまま死ねばよかった物を」
「ラーゼ! 俺と一緒になろう!」
「あんた達、こっちの話聞きなさいよ!」


 私たちの言葉は互いを完全に無視して通り過ぎてしまってた。



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