美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ120

「ふう……」


 辺りは巻き上がった粉塵に包まれてた。視界なんてゼロに等しい。見えるのは目と鼻の先くらいだ。


(やりすぎたかな?)


 今更ながらにそう思う。私が使ったのは人種でも誰もが疲れる氷の塊を打ち出す魔法だ。というか、彼女が使ったのがそれだったから、今の所その魔法しか使える自信がなかった。普通の人種の魔法使いの人なら一つの塊を飛ばすか、頑張って三個を同時に……くらいだろうその魔法。けど私はその数を無数にした。文字通りの無数だ。十や百、百や千でも足りない無数である。一つ一つはそこまで強力な魔法でなくても、流石にこれだけの数だと脅威と呼べる威力になるみたい。


 とても大きかったゴブライダーキングまでその姿を保てなかったみたいだ。他の雑魚なんて言わずもがな……てかそもそもこの場所地形が変わってしまってる。渓谷の一角にぽっかりとした大穴が空いてるいいますか……つまりは地形を変える程の魔法だったという事だ。流石私、凄い。まあ私には無限には等しいマナがあるからね。実の所あれだけの魔法を使ったのに疲れ何て微塵もない。他の魔法使いなら、昏倒するか死ぬほどの大規模威力だっただろうにだ。


(自分の規格外さはわかってたけど、今まで普通に比べられることが出来なかったからね。なんか実感が湧いてきたよ)


 これからは優越感に浸れそうだね。とりあえずそこらの魔法使い達を見たら鼻で笑ってあげようか? 流石に嫌な奴すぎるかな? 


「ゼーラ様! ご無事ですか?」


 私が変な事を考えてると、犬達が私の傍によってきた。てか元から傍に居たから、こいつらが一番に私を囲む。そんな必死になって……私なら全然大丈夫なのにね。それを伝えようと口を開こうとしたら予想外の事を犬さんが言った。


「血が! 目から血が!」


 そういってぱにくってる犬さん。他の犬達もオロオロしてる。私はというと「血?」てな感じ小首をかしげる程度の認識だった。けど腕で拭ってみると、確かに服に血が付いた。


「うーん、まだ完璧じゃないのかな?」
「なんでそんなに冷静なんですか!? ほかに異常は? なぜにあんな無茶を!」


 犬一が一気にそんな事を捲し立ててくる。こいつらは一応私の力の事を知ってるからね。いやほら、冒険者として一緒に活動してく中では必要かなと……まあサイオスや赤線は知らないけど。私が力を使うとその反動に耐えらない。だからこの血はきっとそのせいだと思われたんだろう。まあけど間違ってはない。多分そのせいだ。だって私は魔物共に指一本たりとも触れさせてないからね。だからこれは力を使った反動だ。


「まあまあ、ちょっと力を使うコツをつかんだのよ。少しは反動あるみたいだけど……この位なら全然平気だから」
「貴方がそうでも俺たちはそうじゃないんです! 殺されます!!」


 なにそれ? 蛇にって事? 確かに私が血を流したとしればあの蛇は怒り狂うかもしれないね。けどそこは私は上手くいっておこう。私の魔法の副作用で待ってた粉塵を収まってきてる。この光景に呆然としてた冒険者達もなんとか頭を回復させてきたみたい。そんな時だった。誰もが終わったとそう油断してた。それに視界は粉塵で悪い。数十人いる冒険者達の顔が確認できるわけはなくて……そこに何者かが紛れてたとしても、容易に気づく事なんてできなかった。


 そいつは粉塵に紛れて近づいてきてた。


「させるか!!」


 そんな声と共に私の前に割り込んで来たのはサイオスだった。彼の胸を黒い刀が貫いた。



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