美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ119

 遠くに光が見えた。その光を取るように手を伸ばしてみるけど……当然掬える筈なんてない。だってここよりも遠い所でその光は煌めいたのだから。


「大丈夫かな?」


 私はぽつりとそう呟いた。すると耳ざとく私のつぶやきを聞いたのか、フィリー姉さまが傍に来てこういった。


「大丈夫~、ラーゼ様は大丈夫ー」


 それは私に言ってるというよりも、自分に言い聞かせてるみたいな? そんな感じだ。ラーゼ様はどこかいなくなる時はふらっといなくなる。そしていつの間にか戻ってるのってのが常だ。私たちだってラーゼ様が忙しいとわかってるから、わざわざ用事を訪ねるような事はしない。それに私たちも必要な時は事前にちゃんと言ってくれるし。私たちに言わないって事は、領主としての事か、もっと別の事か……プリムローズと関係ない事が常だった。


 だから口出しちゃいないとそう思えてたんだけど……今回はなんと犬達もいないのである。あの四六時中私たちに張り付いてる犬達もいないのはラーゼ様が連れて行ったから。朝に出掛けたラーゼ様は「犬達も連れてくから」という一言だけであいつらを連れてった。私たち的には「はい?」だよ。だって犬達が関わるって事は私たちと無関係じゃないんじゃないかなって思うわけで……しかも三人一辺になんて……だからなんかもやもやしちゃう。


 私たちに関係あるのなら、私たちだって何かしたい。関係ないことには首を突っ込まないから、関係あることだけ……それがわがままなのもわかってる。私たちはラーゼ様の力で守られてるんだ。ラーゼ様が権力という力で色々とごり押ししてるのはしってるし……アイドルなんてなかったこの世界で人気になったとしても無事で居られるのはラーゼ様のおかげ。再び見てももう光はない。あれがラーゼ様の仕業かどうかなんてわからない。


 けどなんとなくわかるんだ。あれはラーゼ様の光だと。長い時間一緒にいるもん。ラーゼ様の事を察せるくらいは出来る。私たちの傍では力なんて見せてくれないけど、ラーゼ様の気配というか、なんというかは強い。あの光が光った時、なんとなくラーゼ様を感じれた気がした。


「私たちが出来る事をやろう」


 そういうのはミラだ。私たちに出来る事……それをわかってるコランは準備運動してる。既に準備するほどもないくらいに動いてるけどね。てかそろそろ終わりにする気だった。だからアークアの三人は帰らせた。けど確かにさっきの光を見たせいでなんか体がうずうずする。疲れてたハズなんだけどね。私たちがラーゼ様に対して出来る事はアイドルであることだけ。ラーゼ様が理想とするアイドルであること。それが彼女を喜ばせる。


 そのためなら、どんな努力だって出来る。


「しゃあもうちょっとだけやろう!


 私はそういって皆をみる。首にかけてたタオルを置いて、持ってた飲み物の容器もおく。そして一歩を踏んだ時、恐ろしい寒気が私たちを襲った。体が止まる。息が出来ない。回せない首の代わりになんとか眼球を動かす。一体何が……そして視界に何かが映る。それを私は認識する事できなくて……私たちの意識は奪われた。



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