美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ115

「死んだって……なに言って……」
「そのままの意味だけど?」


 うーんやっぱり信じられないか。けど証拠とか持ってくる事も出来なかったからね。確かにここで私が騒いでも、こいつはきっとそれを信じないだろう。まあ、それならそれでもいいと言えばいい。戻った時に絶望するだけだ。


『信じられないか?』
「当たり前――――です」


 そいつはゼルに声かけられたからなんとか最後に「です」をつけたみたい。流石にゼルに向かって軽く喋るなんて事は出来ないみたい。まだ打ち解けてないんだね。私なんて一瞬だったよ? そんなんじゃ、ゼルの力を分けてもらうとか夢のまた夢だ。やれやれ――とか一人で勝手に思ってると、ゼルが解決策を提案してくれた。


『我が見せてやろう。ラーゼが見たそのままの光景を。よいか?』


 そう言ってその相貌がこちらにむく。普通ならそれだけで震え上がってお漏らししちゃうクラスの目だ。まあ私も完全に平気って訳じゃない。油断すると「このトカゲデカいなー」くらい思う。けど怖いとは思わない。それにちゃんと私に確認を取るあたりゼルはよくわかってるしね。私はこくりと頷くよ。万能な真龍さんに任せれば大丈夫でしょ。


『ではやるぞ』


 一瞬ゼルの目が光った気がした。すると私たちの間に水泡のようなものが出てきて、その中にさっきまで見てた私の映像が映し出された。なんと音まで聞こえる。凄い凄い。これほしい。どうやってテレビみたいなのを開発しようか悩んでたんだ。別に一家に一台じゃなくても、街中の目立つ所に設置して、常にプリムローズの映像を流すとかさ……そんなことをしたかったわけ。けど音声を伝えたりする術はあるけど、映像となると難しい。


 ライブでは一時的に私たちの姿を大きな映像として多くの人に見える様にしてる。でもそれを遠くへ送るなんて事できないし、それを記録することもできない。いや、厳密には記録はある程度は出来る。映像を純度の高い魔光石に転写すればいい。けどそれが簡単じゃない。私は向こうの記憶があるからついつい何か出力的なデバイスがあった方がとか思ったけど、魔法が横行するこの世界なら、別にそんなものに頼る必要もないかなって思った。


(けどこれはゼルだから出来ることかも)


 その可能性は高い。二人……いや、一人と一匹? 一体? が私のしてきて事を見てるうちにそんな事を考えてた。そうして映像も終わったのだろう。ふとゼルがこういった。


『貴様、クズだな』


 うっさいわい。まさかの真龍様にまでも呆れられたよ。そもそも私がクズとかわかってるでしょ。私は自分が一番可愛いんだよ。世界は私の為にはあると思ってますはい。なので目の前で知らない命が消えようがどうでもいい。いや、どうでもはよくないか。「ありがとう」と思う。だってクリスタルウッドに帰ったマナは私の力同然だ。あいつらも残念だよね。死して彼女の助けになったと思ってるだろうに、本当は私の力になってしまってるんだから。


「うわああああああああああ!!」


 何やらブツブツ言ってたと思った曖昧な彼女がいきなり私にぶつかってきた。けど、質量がないのか、通り過ぎるだけだっだ。けどそれでも彼女は何度も何度も私にぶつかってくる。なんとか殴ろうと腕も振り上げる。けどその曖昧な姿ではそんな事不可能で……やがて彼女は泣き崩れてしまった。


「うえっ……ぐう……一人……なっちゃっ……った」


 そんな声が聞こえる。流石になんか悪い事をしたかのような気持になる。けど、このまま泣かせとくのも面倒なので私は言ってやるよ。


「しゃっきりしなさい! 彼らの死を無駄にする気? あんたは何のためにここに来たのよ!!」


 うん、なんで私は私を利用した奴を泣かしたり慰めたり、叱咤したりしてるんだろうか? ちょっとよくわからなくなってきたぞ。



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