美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ104

 カードには予め陣が埋め込まれてる。そしてそれを発動するにはマナという魔力が必要だ。まあそれなら最初から私が持ってた方がいいってて事になるけど、そうもいかない事情がある。私は元栓はデカいのだ。私のちょっとはちょっとではない。力が桁違いだから、私のちょっとは普通の人の極大なのだ。なので気軽に力を解放するとかできない。そんな事をしたら私の体が耐えられない。それにそもそもがそこまで調整が出来るものでもないのだ。


 だからあのカードには亜子が持ってる物とは違う機能がある。それは接触吸収だ。あのカードは持ってるだけでマナを吸う。そういう機能が組み込まれてる。それなら常時発動しっぱなしになるんじゃないと思われるかもだけど……そんな心配はない。普通の人が垂れ流すマナなんて本当に微弱なのだ。だからあのカードに込められた術式を発動できる程にマナがたまるはずはない。ただの接触であのカードを発動できるのは私くらいだ。


 そして私は普通にしてるだけでもその恐れがあるから、自分では持ってないというわけ。さっきは見栄えを考えて胸に抱いたけど……別段そんな仕草しなくても私が持ってるだけであのカードたちは発動できる。複数のカードは上から癒しの光を降り注ぐ。そのおかげで、負傷してた冒険者たちが再び立ち上がる。更に別のカードの力で彼等の体と力を強化する。


「なんだ?」
「力が……みなぎるようだ!」


 そんな事を呟く者もいる。気のせいじゃないからね。実際にそういう術式を起動してるんだし。身体強化の魔法を授かったときと同じだよ。まあそこらの術者が出来る身体強化なんかよりも全然協力だけどね。


「うおおおお彼女を守れえええええ!!」


 冒険者の一人のそんな声で私に向かってた巨大ガンマジロに冒険者達が再び挑む。そして今度こそその勢いを押しとめる。


「やれる! 今ならやれるぞ!!」


 確かな手ごたえは自信へとなる。自信は力になる。冒険者たちはさっきやられた事なんか忘れたかの様にガンマジロ達に立ち向かってる。それは良いことだ。戦場で恐怖したっていい事ないからね。


「ゼーラ……お前」


 ビクッとした。後ろからサイオスの奴が声を掛けてきたからだ。崖に近い方のガンマジロ達を片付けてこっちの増援にきたようだ。けど、サイオスの奴は私をみつめたまま参戦しようとはしない。感づかれたかな? 流石にやり過ぎたか? そもそも冒険者として活動する時は力なんて使ってなかったからね。今回のカードなんて初お披露目だし。でもそれならラーゼの時もカードを使った事なんかない訳で……それで私とラーゼが繋がるわけないんだけど、こいつの思考回路は謎だから不安はぬぐえない。


「何サイオス? まだ戦闘中なんだからちゃんと私を守ってよ」


 私は努めて平静を保ってそういうよ。私としてもサイオスの事は気になるし、ききたい事は何気に多い。けど今はその時じゃない。いまはここに溢れるモンスター達を倒す事が重要。しばらく……というか、数秒くらいサイオスは私を見つめてた。


「そうだな。お前を守るのはこの俺だ! ほかの誰にも任せるつもりはない!!」


 そう言ってサイオスは駆けだす。恐怖ガンマジロは今は回るのをやめて頭と四肢を出して冒険者達に応戦してる。けど回らくななったからって脅威じゃなくなったわけじゃない。その口からは炎とかを出してるし、爪は大地を抉る程に鋭い。けどそれでもこちらは奴を追いつめてた。なんたって私の身体強化を受けてるのだ。大抵の傷は直ぐに治るから即死でもない限りゾンビアタックが可能。そうなれば、後は勢いだ。絶え間ない冒険者達の攻撃の波に巨大ガンマジロは押されてる。


 サイオスはそんな冒険者達を踏み越えて一気に最前線へと躍り出る。けどその時丁度巨大ガンマジロの腕が大地にささり更にえぐって岩盤を飛ばしてくる。そのせいで最前線のサイオス含む幾人かが吹き飛ばされる。


「攻撃の暇に隙が出来てる! 行けサイオス!!」


 そこで赤線がフォローに入った。サイオスの背後から彼を受け止めて更に前へと押し出す。一気に前線に復帰したサイオスに慌てる巨大ガンマジロは反対側の腕を振るうが、それを交わし、更に腕伝いに奴の体を登ってく。


「うおおおおおおおおお!!」


 サイオスは雄たけびと共に巨大ガンマジロの額にガンマジロから剥ぎ取った武器をうつける。一瞬キラッと輝いたように見えたそれは巨大ガンマジロを後ろに転ばせたと同時に砕け散った。そして腹を見せて転んだ巨大ガンマジロに冒険者が群がる。勝負は決した。そう思われた。



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