美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ100

 ライブは終わりを告げた。最後まで盛り上がりが下がる事はなくて、私たちはアクワイヤでの夜を駆け抜けました。最後ではアークアの三人と共に挨拶をして幕を閉じたライブ、三人はまだステージの上で座り込んでる。なんとなくその気持ちが私にはわかる。最初のライブの後は私もそうでした。静かになったステージであの時の事を思い出すの。夢みたいな時間……けど夢じゃない実感が残ってて、変な感じなんだよね。


 そう思って眺めてるとラーゼ様が彼女達に近づいてく。


「どうだった?」
「はい……あの……その……なんといったらいいのか……」


 長女さんがしどろもどろにそういうよ。明らかにラーゼ様よりも年上なのに、遠慮したような感じだね。やっばりラーゼ様って相当偉いんだね。私達とは普通に接してるから時々忘れそうになる。いや、ちゃんと理解してる筈なんだけどよ。けど、わたしたちにとってのラーゼ様は偉いとかそんなんじゃない。女神みたい存在だから。人種が決めた地位では私達はラーゼ様を見てない。


「わかるわかる。ライブってなんかトリップしちゃうからね。けど、これから沢山ライブするんだし、ちゃんと休むのも大切よ。体壊してライブできなくなっちゃったらファンが悲しむでしょ」
「私達貴族が……平民の為に?」


 そうボソッといったのはやっばりだけでクーシェちゃんだ。クーシェちゃんは貴族のプライド高そうだからね。


「アイドルになったじゃないの? 貴族かもしれないけど、アイドルでもあるのならファンは大切にしないとね」
「ファン……ですか」


 あんまりよくわかってないみたい。それはクーシェちゃんだけじゃなく、長女さんとシェルラさんもみたい。まあ今日がデビューだったしね。


「もう一回合同でやる予定だし、その時握手会でもやろっか? ファンと直接触れあうのも大切な事だしね。そしたらアイドルがどういうものなのかわかるかも」
「「「握手会?」」」
「そっ、ファンの人達の手を握って触れ合うイベントよ」
「平民と……いえ、異性の方……もですよね?」
「勿論、アイドルでしょ?」


 やっぱり貴族のお嬢様ともなると、貞操観念が強いのかな? そもそもがステージ衣装が普段では考えられないくらい露出多いと思うけど? けどアークアの衣装はお臍が出てるくらいで後は露出が多いって訳でもない。多分お腹を出すのが限界だったんだろう。私達は……そのおへそはもちろん、スカート何てミニだし、脇もだし、背中もかなり大胆に開いてる。もう慣れたけどね。けど恥ずかしくはあるよ。


 でもこれを普通に着れるようになったって事は私もアイドルとしての自覚が出てきたって事なのかもしれない。


「それが今の私たちに必要な事なのでしたら、やります」
「お姉さま!」
「私はお姉さまに従います」


 どうやら反抗的なのはクーシェちゃんだけみたい。長女さんもだけど、シェルラさんも全然いい人なんだよね。なんでクーシェちゃんだけこんな残念な子になってしまったのか……私は不思議で仕方ないよ。そんな不謹慎な考えが伝わったのか、なぜかクーシェちゃんに睨まれた。こ……こわい。


「皆さんもそれをやってらっしゃるのでしょう?」
「もちろん。握手会はアイドルの基本だからね」
「それなら断る理由はありませんわ。クーシェ、私たちはこの街を、いえ、この領を背負ってるのよ。前を行く先輩方から学べる事は全て学びます。異論は認めません」
「……はい……はい!」


 長女さんの言葉に最初の「はい」は渋々だったけど、次の「はい」はなんか元気だった。その後に私を睨んできたし、その時に長女さんがなにか耳打ちしてたからきっと納得できることをクーシェちゃんにいったんだろう。うう……ぜったい禄でもないことだよ。だって今も「今に見てなさい!」とか私を指さしていってる。


 それからなぜかクーシェちゃんに付きまとわれる日々が始まりました。



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