美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

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 ラーゼ様が行っちゃった。どこぞかに行って帰って来たと思ったら、またすぐにどっかに行っちゃって……いや今回はいってる所はわかってる。この街の偉い人のいるところだ。何やら色々と仕掛けてくるとかラーゼ様はいってた。ここでのステージにかなり気合が入ってるみたい。確かにここアクワイヤはとてもきれい。流れる運河には小さな小舟が流れてて、街の至る所に噴水がある。とても清浄な空気が満ちてる感じがする。


 私はいつものプリムローズのメンバーで今は行動してる。それプラスマネージャーさん達だ。でも今なら私にもわかる事がある。いままでは私は皆で居れるだけでよかったから、そこまで気にしてもなかった。けど、ミラ姉と犬次さんの事とか聞いたからかな……私でもその視線がどうなっるのかわかっちゃう。二人ともチラチラと視線を交錯してる。やっぱりその……


(恋人……同士?)


 なのかな? 私にはよくわかんないけど……その言葉を考えただけで顔が赤くなるのがわかるよ。だってもしも自分に恋人が出来たら……とか、はっきりいって想像できないもん。でもこんな身近にそんな関係の……なってるかはわからないけど、近い関係の人がいるってのが信じられない。その気持ちは……


(私がラーゼ様や皆の事を好きって気持ちとは違うのかな? きっと違うんだよね)


 私は皆が好きだ。私の事を助けてくれたラーゼ様は勿論。私の事を可愛がってくれる皆に感謝してる。ファイラル領の人達はみんないい人たちで皆が優しい。だから心がほっこりする。でもきっと好きってそれだけじゃないんだよね。ミラ姉も犬次さんも赤くて戸惑ってて、けど目が合うと照れ臭そうに笑って……なんか見ててムズムズする。それと同時にいいなあーとも思う。


「はあ……」


 私がキラキラした目で二人を見てると、隣のシシちゃんが重い重い……それは重いため息を吐いた。そして更にボソッと「ウザッ」とか呟く。それはきっと私以外には……いやすぐ後ろにいた犬一さんにも聞こえてたみたいで二人して気まずい笑いを零した。


「ちょっとあんた、あの二人の邪魔してきてくれない?」
「シシちゃんそれは……」
「私のお願い聞いてくれないっての?」


 そう言われてタジタジしてる犬一さん。私は二人もなんか雰囲気が変わった気がする。前はシシちゃん、マネージャーさんたちの前でも猫被ってたのに、今はそうじゃない。なんだか自然体? でいる気がする。フィリー姉さまはさっきからニコニコとして犬さんと後方にいる。別段何かを二人は話してる訳じゃない。ただ優しく私たちを見守ってる感じ。さすがフィリー姉さまは大人って感じだ。おっばい大きいしね。


 私的にはおっぱい大きいと大人なのだ。私はぺったんこだから羨ましい。けど皆これからだよっていってくれる。けど何故かミラ姉には肩をたたくだけで皆なにもいわない。そんなミラ姉には私が「一緒に大きくなろう」というのだ。そしたら泣きそうな顔でギュッとしてくれる。てかこうやってみたら、私たちは五人でマネージャーさんは三人。ラーゼ様はプリムローズのメンバーだけど、やっばり同じ所にいるなんて思えない存在。だから四人に対してマネージャーさんは三人でそれぞれ仲良くなってる感じがする。


(私、一人?)


 そう思うとなんか悲しい。なんかシシちゃん達が遠くに行っちゃわないか不安になるもん。そんな事を感じつつ、少し大きな広場に出た。するとその時、私たちに声を掛けてくる人がいた。その子達は三人の女の子で、ファンの人達とはちょっと違う雰囲気だった。ビクッてなんか来た。敵意? そんなのを感じた。


「明日のライブは私たちもご一緒しますの。私達はアクワイヤのアイドルグループ「アークア」ですわ」


 そう言って縦ロールの目元きつそうな人がミラ姉に握手を求めてきた。



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