美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ93

「面白いですよね」


 窓を閉じ切った部屋の中でそいつが光源となってる映像を見つめてそう言ってる。その映像にはプリムローズのライブ映像が映し出されてる。輝く彼女達……そしてそのなかでもひと際輝いてるその人物を彼女は見てる。俺の視線も無意識に彼女へと吸われてく。地上に降り立った女神……ラーゼへと。美しい……心の底からそう思う。


「お前たちは何が目的なんだ?」


 俺はそういうよ。てかここ数日、何回もそれを聞いている。そして帰ってくる答えは決まってる。


「もう何回も伝えた筈ですよね? 私たちは彼女が何者なのか、それを見定めてるんです」
「おう、よくわからん」
「貴方はバカですものね」


 そういいながら何か映像を切り替える。すると今度は別のグループの映像に切り替わった。それは最近話題となりつつあるサンライズというグループの物だ。まあ俺はあまり興味はない。俺の心はラーゼで満たされているからな。


「彼女達は危険ですね。理に反してます」
「理?」
「わからないのならいいですよ」


 どうやら俺に説明するのは無駄だと判断したようだ。賢い奴だ。俺も難しい話はきらいだ。自分から聞いといてなんだが、別にそこまで興味もないしな。ラーゼが関わらないのなら、こいつらが何をしようがどうでもいいことだ。


「だけどまさかもう一組現れるなんてな。こんな事を思いつくのはラーゼくらいだと思ってたぞ。しかも案外人気なんだよな?」
「……そうですね」


 なんか妙な間があったな。きっとこいつの事だ大方「馬鹿ね」とか思ってたんだろう。


「彼女達はセーバレス。その力を利用してる」
「いかさまか! 納得だな」
「なんで嬉しそうなんですか?」


 それは当然だろう。ラーゼよりも可愛くそして美しい存在なんていないからだ。誰もが納得する筈のその真理があるのに、別のグループに浮気する奴らがいるというのが俺には信じられない。だがいかさまなら納得できるというものだ。


「別にいかさまとは言わないのでは? 種族が持つ元々の特性……力ですよ。それは実力と呼べるでしょう」
「だがさっき理に反してるとか言っただろう?」
「…………」


 なんか驚愕した――みたいな目をされた。失礼な奴である。そのくらい俺にもわかるわ。そもそもが俺は別に頭が悪い訳じゃない。使い方がおかしいだけだとよく言われた。


「サイオスさんのいった通りではあります。ええ、そもそもセーバレスはそんな強大でもなんでも種です。ただ種としては人種よりは上ですから、見目がよく魅了が使える程度。その魅了もそこまで協力ではなかったんですよ。ですが彼女達のそれは……どうやらそうではないみたいですね。ほんと、あの存在は色々な物を捻じ曲げます」
「まさか……ラーゼが何か関わってるとか言ってるのか?」
「……」


 もうその反応良いから。俺はラーゼの事ならなんだってわかるんだ。愛があるからな。


「貴方は見えてる物が極端過ぎるんですよ。本当にあの方の……まあいいです。ぞれよりもなんでいつまで私たちと共にいるんですか? もう帰ってもらっていいんですけど?」
「それはお前たちがラーゼを狙ってるからだ。俺はお前たちをまだ信用してないからな」
「そうですね。私達もそろそろ準備が整ってきましたので。そろそろ動こうと思います」
「それを俺に言うのか?」


 俺は態勢を少し輝て足に力を入れる。いつでも動き出せるようにだ。だが、白いローブを羽織る彼女達に変化はない。俺など脅威と見なしてないかのよう。


「貴方も知りたいじゃないですか? あの方の特異性を。私達には大きな目的があるのですよ。あのマナと力と秘密。それが本当に私達の予想通りなら……」


 俺は一足で彼女に近づく。だがその瞬間、体が動かなくなった。その目はさっきまでは異質なものになってる。瞳の中に三文の斑。動けない……こいつらは危険だ。だが……俺事態の意識が遠のいてく。


「借りは返したので、これからは私の為に働いてくださいな。あの方のもう一つの姿とサイオスさんなら接触できますよね?」


 そんな悪魔のような囁きが俺の中で響いてた。



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