美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ89

「どうして……」
「どうして? 当然の事でしょ。私にはその力があるもの」


 大言壮語な発言をいただいた。誰の力なのかと……ね。まあ私も私自身の力ではないけど……私はゼルラグドールと魂の回廊で結ばれた友だから対等の関係なのだ。だから私たちは一心同体みたいな? そこに上も下もないわけだけど、私から漏れてる力を受け取ってるキララたちは違うよ。あくまで私を通してゼルラグドールの力をかっさらってるだけだからね。それは決して自分の力ではない。


 私が今、その力の元栓を占めれば、キララは聖女と呼ばれるその力を失う。僅かな魔力は残るだろうけど、けどそれは私を通してゼルラグドールの力を行使してた時とは比べ物にならない程に脆弱だろう。


「ありがとう。もう休んでていいから」


 そう言って二人……一人と一体といった方がいいかな? が歩いてくる。既にキララの魔法で操ってた生徒たちは眠らされてる。残るは私一人で……さらにどうやらキララとペルには私の事が見えてるみたい。いや、ペルはまだわかるよ。ペルはとても特殊だし、そもそも人種でもないしね。あれはキララが生み出した全く新しい存在だ。キララが願った力が込められてて、それはキララ自身も把握してない程。


 てか他の魔道機械たちとはペルは一線を画してる。新しい機能とか普通は後付けオプション的な物なのに、ペルは自己進化をその内部に有してるみたいなんだよね。ペルと同じような魔道機械を作ろうとしたけど、まだまだ実現できそうにないのが現状だ。キララにも協力させたけど、ペルみたいな個体は生まれてない。多分何かが噛み合った結果、ペルのような突然変異みたいな個体が出来上がったんだろう。


 はっきり言って、今の状況で問題はペルの方だ。ペルを前に出して、キララは後方支援をするってのがやり方だし……ペルは超強い。こういうののセオリー的には後方支援のキララから潰すものなんだろうけど、ペルがそれを許すわけもなし。面倒になってきたな……てかなんでキララにまで見えてるのか? 


「あの……チュリエ……ダリア嬢を背負って子は?」
「大丈夫、きちんと保護したから」
「いえ……私も微力ながら力添えを……」
「うーんけど、あれは洗脳に近い事が出来るようだし、貴女が操られると面倒なのよね。その点ペルはその心配がないから。安心して私の傍にいて」


 ぐぬ……キララの癖に考えた事いうじゃん。あの子も来るのなら、今度はあの子を操って脱出を試みたのに……どうすれば……そう思ってる間にペルの奴が私にパンチしてくる。強烈な奴だ。人種なら上半身吹っ飛ぶんじゃない? って威力してた。まあ私に効かないけどね。私の防御を抜く……それはすなわち、ゼルラグドールに傷をつけると動議なのだ。まあ厳密には私はもっともろいだろうけどね。


 でもそれでもペルの攻撃なんかは蚊にもまだまだ及んでない。


「ペルの攻撃をここまで受けてびくともしない? 一体どんな種よ」


 そう言いつつ、キララは攻撃魔法も放ってくる。回復と支援の方が得意だろうけど、別に使えない訳じゃないからね。いいよねキララは。魔法でなんだって出来て。私なんてほとんどこれしかないってのに……色んな魔法を次々と放つキララの周囲はマナの残滓でキラキラと輝いてみえる。確かに……聖女と呼ばれても不思議ではないのかもしれない。まあ私はどんどんムカムカしてきたけどね。ちょっとキララには憂さ晴らしいしたい所。


 けどそれにはあの子が邪魔だね。ここまで正体隠してきたのにバラしたくない。けど、キララやペルにはもう別にいいかなって気もする。だってこいつらは私が口止めすれば他言しないだろう。事故処理は聖女なキララ様に丸投げして都合よくしてもらえばいいのだ。


(ならとりあえずあの子の意識を奪わないとね)


 とか私が思ってると、キララが「ごめんなさい」とか言って彼女の意識を魔法で奪って光の膜で覆った。


「どうやら、生半可な攻撃では通らいみたいね。ペル、本気で行くわよ」
「了解だ」


 どうやら本気を見せるから彼女を眠らせたみたい。ふーん本気ね。それはちょっと見てみたい。そしてそれが通じなくて絶望した顔もみたい。キララにはいいお仕置きになるでしょう。なんか私に都合よく場面は整ったし……最近反抗的なキララに私の偉大さを思い出して貰おう。ふふ……ふふふふ。私は内心でほくそ笑むよ。



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