美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ86

「やめ……きゃあああああ――――プツっ」
「応答を! 応答を!!」


 それから通信に反応はなかった。何度呼び掛けても返答はない。私は確認の為にも他の組にも通信を送る……けど、その全てが無反応だ。つまりは既に残ってるのは私達しかいないという事だ。


「こ……これは異常事態ですよ~! 援軍を頼みましょう!」


 そういうのは私よりも一回り小さな体で線も細い、薄い感じの短めの金髪を後ろで縛ったチュリエだ。私のパートナー。確かにそれは一理ある。こんな任務、簡単に終わると思ってた。どうせ下心丸出しの男子学生が女子寮に潜入したんだろうと思った。だが……どうやら何かが違う。そもそもこんなに魔法を連発出来るなんて……おかしい。そこまで優秀な奴はいない。透明化なんて高度な魔法を使えそうな男子は数人くらいしかない。


 私たちは今、教師に指示を出して生徒のリストとそしてそれでピックアップした生徒を確保してる。そう確保してしまってるのだ。私達にはここの捜索があるから教師達がその特定の学生を指導室とかに呼び出してる。なので既に彼らは白なのだ。もしかしたら爪を隠してた奴がいるのかもしれない。寧ろその方がいいのかもしれない。だって今……わたしの頭には警鐘が鳴り響いてる。


「援軍を頼んでどうにかなるかしら?」
「どうしてですか?」
「どうして……ってのはわからないけど……なんだかまずいのを相手にしてる気がする」
「それって……もしかして人種じゃないとかですか?」


 チュリエの言葉に私は返せない。だってそれは最悪の想定だからだ。けど……容疑者が既に白とされてるのなら、それを否定できない。私たちは今、他種族を相手にしてるのかもしれない。けどそれなら殺すでもなんでもないってのが気がかりではある。友好的なら……いいんだけど……そう思ってると、全方から何やら慌てて駆けてくる者がいた。それはついさっき偉そうに登場したデリアとかいう奴だ。


 私たちの事を不要とか言ってた癖に、情けない顔をして走ってる。淑女にはありえない姿に少し留飲が下がる。


「たったす――助けてくれ!!」


 どの口がそういうのか……わたしはそうおもったけど、ここの生徒を守る為に私たちは来たのだ。助けない訳にはいかない。そう思ってチュリエと走りだしてデリアと合流した。


「どうしたんですか? それにとりま……お友達の方は?」


 チュリエもデリアの事をよく思ってなかったのだろう。なんか棘が出てる。ぜえぜえと息を切らしてるデリア嬢はなんだかとても混乱してるようで容量を得ない言葉を紡ぐ。


「彼女達は……ああ!? いきなりおかしく……そしたら私を!」


 何かがあったのは間違いないみたい。これは……やっばり応援を頼んだ方がいいかもしれない。既に学生の手に負える領域を逸脱してるのかも。そう思ってると足音が響き渡る。それは一つ二つなんてものじゃない。大量の足音だ。そしてデリア嬢が走ってきたほうからこの寮の女生徒達が現れた。


「き……きた!?」


 そう言って私たちの後ろに隠れるデリア嬢。その姿には噂に聞いた凛々しさなんて微塵もない。普通の女の子そのものだった。


「なんだか……変ですよ?」


 チュリエの言葉に私もうなずく。生徒の様子がおかしい。皆虚ろな目をして、ふらふらとした足取りをしてる。そしてその中には私たちの仲間もいた。


「逃げるわよ!」


 私は素早く判断した。あれはきっと敵に操られてる。でもだからって貴族の子達を不用意に傷つけたら大問題だ。なのでそれしか取れる道はなかった。だけどどうやら既にこの寮は敵の手に落ちてるようだ悟った。前も後ろも、ふらふらとした女生徒達が立ちふさがったからだ。



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